自動車整備の分野で外国人材を受入れる場合、主に特定技能と技能実習の2つの手段があります。人手不足も深刻で積極的に外国人材を活用したいところではありますが、この分野は他分野よりも規制が厳しく、一般的な受入基準とは別に、自動車整備分野に固有の条件が定められています。
今回は、これらの条件を解説したうえで、自動車整備の外国人を受入れる際にどちらの仕組みが便利かまとめます。是非最後までお読み下さい。

特定技能

メインは整備業務

特定技能人材は、実習生とは違って日本人とまったく同じ業務をすることが認められています。しかし、それは「自動車整備士としての範囲内で」という条件がついています。つまり、特定技能人材といえども、自動車整備士が通常行う業務以外は原則として従事することができません。
ただし、どんなルールも例外があるように、日本人の自動車整備士が”付随的に”する業務は、特定技能人材も従事してOKです。この「付随的業務」は「関連業務」と命名されていて、国交省が例示しているものは、「整備内容の説明及び関連部品の販売」や「部品番号検索・部内発注作業」など11種類あります。
なお、特定技能人材に関連業務だけ従事させることは、制度違反となります。

事業所要件は技能実習よりも緩和

自動車整備での実習生の受入れは、後ほど解説しますが

  1. 地方運輸局長の認証を受けた整備工場
  2. 整備対象の装置が限定されていない工場

の両方の条件を満たす工場でのみ可能です。
一方、特定技能の場合は、「地方運輸局長の認証を受けた整備工場」という条件はそのままですが、整備対象の装置が限定されている工場や、二輪車のみ整備を行う工場でも受入れができるようになっています。

登録支援機関選びは選択肢狭まる

特定技能人材を受入れる際には「支援計画」を作成し、その計画を実施しなければなりません。
支援計画は登録支援機関へ委託できるわけですが、自動車整備の場合、以下のどれかの条件を満たした職員が所属している登録支援機関にしか、委託をできない規定となっています。

  • 自動車整備士1級保持者
  • 自動車整備士2級保持者
  • 自動車整備士の養成施設で5年以上指導経験がある者

特定技能人材の受入れにあたって支援計画を委託する際には、登録支援機関が基準を満たしているか、受入企業側としても十分確認することが必要となってきます。

技能実習

実習指導員

就任には厳しい条件

実習生を受入れる際には、作業手順などを指導する「実習指導員」の選任が必要です。通常、実習指導員はその職種で5年以上の経験があれば要件を満たしますが、自動車整備の場合は違います。
自動車整備職種の場合、5年以上の経験に加えて

  • 技能検定1級または2級に合格した人
  • 技能検定3級に合格した人で、合格後に3年以上の実務経験がある人

という条件が追加されます。
また、技能実習3号(4年目・5年目)の実習生を受入れる場合は実習指導員の条件がさらに厳しくなり、

  • 技能検定1級に合格した人
  • 技能検定2級に合格した人で、合格後に3年以上の実務経験がある人

となります。

実務経験とは

先程の実習指導員のところで「実務経験」と書きましたが、実務経験についても細かく定められています。どんな場所で経験を積んでいてもいいわけではありません。
実務経験とは、

  1. 自動車分解整備事業(道路運送車両法78条)の認証を受けた事業場
  2. 優良自動車整備事業(道路運送車両法94条)の認証を受けた事業場
  3. 各都道府県の自動車整備振興会から承認を受けた特定給油所
  4. 1〜3までの事業場と同等の整備作業ができる事業場

において、

  • 道路運送車両法施行規則第3条で定められた分解整備作業
  • イと同等の自動車の点検・調整・交換作業

に従事したことを指します。
受入企業に実習指導員になることができる人材が在籍しているか、事前に確認しておく必要があります。

実習生は自動車整備の講習が必須

通常、実習生は入社前に入国前講習と入国後講習で日本語や労働法に関する講習を受講しますが、自動車整備の場合、自動車整備作業に関する講習も行わなければなりません。
実施時間や講師となる人物の条件などは定められていないので、誰が何時間指導してもいいと言えますが、教材は指定されているので、これをある程度は網羅する形で講習を行う必要があると考えられます。

計画作成指導者にも細かい条件が

実習生を受入れる企業の皆さんはあまり意識していないかもしれませんが、各監理団体には「計画作成指導者」という役割の職員が在籍しています。計画作成指導者がいないと、技能実習機構へ申請する書類を作ることができません。
計画作成指導者は、多くの職種で実務経験がなくても就任することができるのですが、自動車整備の場合は、実務経験が必須となっています。その実務経験とは、実習指導員のところで紹介したものと同じです。
受入企業に直接関係のある要件ではありませんが、自動車整備職種に慣れていない監理団体から受入れをする場合、監理団体側もこの要件を忘れていることがあります。受入企業サイドからもリマインドすることが円滑な受入れに繋がります。

まとめ

ここまで、自動車整備の外国人材受入れ手段として、特定技能と技能実習の2種類の注意点を比較しました。両者とも一長一短あるように見えます。
しかし、外国人材に従事させることができる業務範囲の点では、特定技能に優位性があると言えます。また、コロナ禍の今、日本政府の政策方針も不安定で、国外から人材を呼び寄せることには不安感が拭えません。

当面は特定技能人材を活用に重点を置き、補完的に実習生を活用することがベターな選択と言えるでしょう。

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竹村 友希

過去3000名以上の外国人を指導してきた日本人理解授業を担当する講師。前職の介護職での経験を生かし、日本人の人口の大半を占める高齢者層と、どのようにコミュニケーションをとるべきか、どのような理解が必要かなどをメソッド化し教えている。