特定技能人材を自社のみで受入れる場合、避けて通れないのが入国管理局への申請です。今回は、特定技能人材が「特定技能ビザ」を取得するまでに必要な手順を解説します。

自社で受入れ可能か確認する

特定技能人材を受入れるためには、法令で定められている欠格事由にあてはまらないことが条件です。
例えば、受入予定の会社が、労働法や入管法などに違反して5年以内に罰金刑を受けているような場合は、特定技能人材を受入れることができません。
他にも、技能実習生の失踪者を出している場合や、1年以内に日本人従業員をリストラしているような場合も、特定技能人材の受入れ不許可事由となることがあります。

雇用契約を結ぶ

ビザ申請の第一歩は、特定技能人材と雇用契約を結ぶところから始まります。特定技能人材用の雇用契約書のフォーマットは、出入国在留管理庁のホームページで公開されています。(http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/10_00020.html
日本人への労働条件通知書とは細かさが格段に違います。とりわけ待遇面については、すべての控除項目とその金額、見込み手取り額などを事細かに記載する必要があります。
特定技能人材の雇用条件を決定する前に、所定のフォーマットに一度目を通しておくことをおすすめします。

分野独自の必要手続きを確認する

特定技能受入れの14分野の一部で、独自の手続きが定められていることがあります。
建設分野であればビザ申請の前に国交省への申請が必要となりますし、素形材産業など製造3分野では、事前に「協議会」へ加入しておかなければなりません。
それぞれの手続きにも時間が掛かりますので、申請予定の分野で必要な手続きがあるかどうかは確認しておくようにしましょう。

事前ガイダンスを行う

雇用契約を締結後、ビザ申請を行うまでの間に、特定技能人材に対して「事前ガイダンス」を行う必要があります。
事前ガイダンスの中で情報提供しなければならないのは、

  • 従事させる業務の内容や報酬額
  • 日本でできる活動の内容(受入企業でのみ就労可能)
  • 保証金の支払いや違約金契約をしていないこと、今後もしないことについて確認
  • 外国の送出機関への支払いについて、金額・内訳を十分理解しているかの確認
  • 寮について(広さや寮費)
  • 仕事、日常生活、社会生活、苦情に関する相談体制(○曜日から○曜日の○時から○時まで、など)とその手段(面談、メールなど)
  • 支援担当者の名前、連絡先(メールアドレスなど)

などが定められています。
情報提供する項目が多数に上ることから、運用要領では事前ガイダンスは3時間以上掛けて実施する必要があるとされています(受入れ中の実習生を特定技能に移行させるような場合であれば、1時間以上でOKです)。もちろん、特定技能人材の母語など、本人が理解できる言語で実施しなければなりません。
また、ZoomやSkypeなどを使ってもいいですが、対面で行う必要があります。必要事項を記載した紙を渡すだけでは、事前ガイダンスをしたと認められません。

健康診断を受診する

ビザ申請の添付書類の一つに、「健康診断個人票の写し」があります。
既に実習生などで日本にいる外国人であれば1年以内に受診、外国から呼び寄せる場合は3カ月以内に受診し、健康診断診断個人票を発行してもらう必要があります。
注意しておかなければならないのは、法定の最低限の健康診断では、受診項目が足りない可能性があることです。
例えば、定期健康診断において、医師が不要と判断した場合血液検査は実施しないことが認められています。しかし、特定技能ビザの申請の際には、ガンマGTPや悪玉コレステロールの値などが記載された書類を提出しなければならないので、血液検査は必須となります。
このような違いに注意して、定期健康診断で検査していない項目があれば、追加で検査を行う必要があります。

健康診断に関する書類フォーマット
http://www.moj.go.jp/isa/content/001338939.pdf

必要書類を準備する

ビザ申請には、多くの添付書類が必要となります。
主なものを列挙すると

  • 登記簿
  • 役員の住民票の写し
  • 納税証明書
  • 労働保険等納付証明書
  • 社会保険料納入状況回答票

など、これだけでも法務局へ行って、市役所へ行って・・・と、かなりの時間が必要になることがおわかり頂けると思います。
この他に、特定技能人材に関する書類(本人の課税・納税証明書や源泉徴収票の写しなど)も取り寄せておく必要があります。

ビザを申請する

ここまでの手続き、書類準備を終えれば、やっと入国管理局へ特定技能ビザの申請ができるようになります。
原則、特定技能人材が入国管理局へ申請しなければなりませんが、行政書士などへ依頼する場合は、本人は入国管理局へ行かなくて構いません。

まとめ

特定技能ビザの申請に漕ぎつけるためには想像以上の時間が必要になってきます。また、「この書類のここには何を書けばいいの?」ということもあると思いますので、不明点が出てきたときは、最寄りの入国管理局へ問い合わせましょう。

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竹村 友希

過去3000名以上の外国人を指導してきた日本人理解授業を担当する講師。前職の介護職での経験を生かし、日本人の人口の大半を占める高齢者層と、どのようにコミュニケーションをとるべきか、どのような理解が必要かなどをメソッド化し教えている。