【自動車運送業】ネパール人ドライバーの採用が今後のカギになる

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

少子化や高齢化などもあり、日本の労働人口は年々減少傾向が強まり、各業界で人手不足が深刻しています。中でもより深刻なのが自動車運送業です。バスの運転手が不足してバス路線の廃止が余儀なくされるケースやトラック運転手が不足して物流に影響が出るケースが出始めています。

こうした状況を受けて、特定技能外国人を活用する動きが強まっています。中でも注目されるのがネパール人です。ネパール人が持つ特有の性質がドライバー向きではないかと考えているためです。今回はネパール人ドライバーを採用するメリットや、そもそも自動車運送業とはどういうものかなどを解説します。

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目次

1.ドライバー不足の現状

ネパール人ドライバーの採用について解説をする前に、まずはドライバー不足の現状をご紹介します。
トラックドライバーを例にとると、元々1995年に980万人いたのをピークに減少し続けており、2030年には519万人まで減ることが予測されています。

※:経済産業省「令和4年度産業経済研究委託事業(「物流の2024年問題」等に対応した物流効率化推進に関する調査研究)調査報告書」

さらに追い打ちをかけたのが、2024年に施行された働き方改革関連法です。働き方改革関連法では、ドライバーに対する時間外労働の上限が規制されるようになり、年間960時間までと定められた他、年単位・月単位・日単位で拘束時間や休息時間が規制されるようになったのです。

一方、タクシードライバーも不足の傾向が続いています。人材不足を理由としたタクシー業の倒産が急増しており、2024年に倒産に追い込まれたタクシー業35件の中で、人手不足を理由としたケースは4割以上に及び、倒産の大きな原因となっています。

※:帝国データバンク「倒産集計 2024年(1月~12月)」

そして、バス運転手も同じように不足気味です。バス運転手の数はコロナ禍前までは安定した人員を確保できていましたが、コロナ禍以降に急減し、2030年度には9.3万人まで減少すると言われています。現状のバスのネットワークを維持するためには2030年度時点で12.9万人が必要とされており、4万人近く不足するという試算が出ているのです。

※:読売新聞「バス運転手は「割に合わない」、人手不足で減便・廃止相次ぐ…残業規制が拍車」

1-1.なぜドライバー不足なのか?

こうしたデータからもわかる通り、トラック・タクシー・バスすべての運転手が現状で不足していることは明らかです。なぜドライバー不足なのか、その理由を以下にまとめました。

  1. 労働環境の悪さと年収の低さ
  2. 高齢者と若者のなり手不足
  3. ドライバーに対するイメージの低さ

1.労働環境の悪さと年収の低さ

まず、「労働環境の悪さと年収の低さ」について、労働時間が他の産業と比べて明らかに多いことがデータからもわかります。全産業における労働時間の平均はおよそ2100時間前後に対し、トラックドライバーの場合、2500時間前後と400時間以上長く働いています。

一方、所得額で見ると全産業平均が年間480~500万前後の中、トラックドライバーは380~450万前後と明らかに少なめです。

※:国土交通省「トラック運送事業の働き方をめぐる現状」

長く働いているにもかかわらず、給料が少ないため、わざわざドライバーを選ぶメリットが少ないことは労働時間と所得の関連性から見て取れます。加えて、休憩時間がなく、トイレに行く時間すらも満足に確保できないケースもあるなど、労働環境の悪さも指摘される状況です。

2.高齢者と若者のなり手不足

次に、「高齢者と若者のなり手不足」ですが、全産業における20代以下の構成比は16.6%、65歳以上は15.6%に対し、道路貨物運送業では20代以下は10.3%、65歳以上は9.3%と少ないのが実情です。高齢者や若者が働きにくい職場であるため、現役世代が賄うほかありません。その現役世代も多くが40~50代のため、いずれ現役世代が60歳以上になった場合、引退を余儀なくされるケースが高まります。

※:国土交通省「トラック運送事業の働き方をめぐる現状」

3.ドライバーに対するイメージの低さ

若者のなり手不足の背景には「ドライバーに対するイメージの低さ」も挙げられます。過去の調査では、トラックが重要なライフラインだと強く認識する人が50代や60代では60%以上いたのに対し、20代は4割弱とトラックドライバーの重要性を強く認識できていない結果が出ています。

※:全日本トラック協会「トラック輸送に関する意識調査2020」

そもそもトラックが貨物輸送の9割を担っている事実について、知っていたと答えていた人が全体でも3割弱しかいないほか、緊急時にトラックが被災地へ緊急物資を送るなどしている事実も半数程度しか認識していない結果も出ています。

こうした背景もあり、トラックドライバーを始め、ドライバーそのものに対して憧れを見いだせず、わざわざ職業の1つにドライバーを入れていない若者が多いことが言えます。そして、高齢者はドライバー特有の労働環境・条件の悪さが災いし、続けたくても続けられないケースがあると言えるでしょう。

2.自動車運送業でネパール人を採用するメリット

国内では人手不足が慢性化している自動車運送業において、救世主となり得るかもしれないのがネパール人です。ネパール人ドライバーを採用するメリットを以下にまとめました。

  • 運転技術が高い(譲り合いの精神を持っている)
  • 日本と交通環境が同じ
  • 人懐っこい性格
  • 日本人と性格・価値観が似ている

本項目では、ネパール人ドライバーを採用するメリットについて解説します。

2-1.運転技術が高い(譲り合いの精神を持っている)

ネパール人ドライバーは運転技術が高い傾向にあると言われています。ネパールには教習所と試験場が兼ねているところもあり、運転に関してしっかりとした教育を受けられる環境があります。日本の企業の中にはバス業界と協力してネパールの教習所と連携し、日本式教習所を立ち上げるケースが出てきています。日本式の運転スキルを身につけることで、即戦力としてバスドライバーを送り込む狙いがあるのです。

※:PRTIMES「ネパールで「日本式教習所」立ち上げ、東急バス・みちのりHDと協力し、バスドライバーを育成・輩出へ」

一方で、ネパール人の性質である譲り合いの精神も、ドライバー向きと言えます。我先に行こうとするのではなく、渋滞でも交互に譲り合いながら進路を確保していくことで事故を防ぐことができます。運転技術が高く、譲り合いの精神も持ち合わせるネパール人は間違いなくドライバー向きであると言えるでしょう。

2-2.日本と交通環境が同じ

そもそもネパールでは日本と同じ左側通行のため、車は主に右ハンドルです。左側通行の国は50カ国程度とされ、代表的な国として日本意外だとイギリスやオーストラリアなどが挙げられます。世界的には右側通行の国が多い中、ネパールは少数派と言える左側通行の国です。そのため、ネパールでの運転技術をそのまま日本でも活用しやすくなります。

一方で、ネパールではバイクが多いほか、道の舗装も劣悪なため、安全運転を心掛けないとすぐに事故を起こすほか、断崖が多いネパールにおいて転落するリスクもあるため、慎重にならざるを得ません。その点、日本は整備が進んでおり、ネパールほどバイクや自転車が多いとは言えず、ネパールでの運転技術をより活かしやすい環境になっています。

※:外務省「世界の医療事情ネパール」

2-3.人懐っこい性格

ネパール人は人懐っこい性格の人が多い傾向にあります。ネパールは決して裕福な国とは言えず、資源的にも豊かではないため、大所帯の家族が譲り合いの精神で過ごしていく傾向にあります。そのため、仲間意識が芽生えやすく、コミュニティ同士での人間関係が構築されやすくなるのです。

また、人と助け合うことに躊躇がなく、たとえ初対面の相手であっても、多少会話を重ねる中でフレンドリーになっていきます。労働環境的に決して優れているとはいえないドライバー業界において、人懐っこい性格はプラスに働きやすいと言えるでしょう。

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2-4.日本人と性格・価値観が似ている

環境的にネパールと日本は様々な面で大きく異なる一方、性格や価値観などは比較的に通っています。例えば、ネパール人は高齢者を大切にする傾向が強いですが、日本でも年配の方を優先する動きが目立ちます。

またネパール人は主張を控えめにしたり、周囲との協調を優先したりしますが、この点も日本人と似ている要素です。もちろん、全てが似ているわけではなく、ネパール人は時間にルーズなど、明らかに異なる要素もあります。ただ、全体を通してみると、ネパール人と日本人は性格や価値観が似ていることは確かです。

3.【新分野】自動車運送業とは?

ネパール人をドライバーとして採用するには特定技能「自動車運送業」の資格を得てもらう必要があります。特定技能「自動車運送業」には大きく分けて3つのカテゴリーがあります。

  • タクシー運送業
  • バス運送業
  • トラック運送業

本項目では3つのカテゴリーに加え、外国人ドライバーの受け入れ見込みについてまとめました。

3-1.タクシー運送業

タクシー運送業は、運航業務接遇業務を行います。技能水準は、一般的なタクシー運転手に求められる第二種運転免許が必要であるほか、タクシー運送業に関する特定技能評価試験への合格が求められます。特定技能「自動車運送業」すべてに共通するのは、日本において運転免許を取得したり、手続きを進めたりする中で、最初に在留資格「特定活動」を取得する点です。

タクシー運送業に関しては在留期間1年、更新不可の中で手続きを完了させる必要があります。ちなみに日本語能力試験はN3レベルが求められ、一般的な特定技能と比べると日本語能力のハードルは高めです。

3-2.バス運送業

バス運送業に関しても、大枠はタクシー運送業と変わりません。運行業務接遇業務が必要です。第二種運転免許が必要なのも同じで、バスに関する特定技能評価試験の合格も必要です。また、在留資格「特定活動」を取得し、1年以内に手続きを済ませなければならない点もタクシー運送業と共通しています。

他にも共通点があり、日本語能力試験N3レベルが必要な点です。ちなみに日本語能力試験N3レベルは、日常会話で用いられる日本語がある程度理解できるレベルとされ、新聞の見出しを見ておおよその概要がわかるかどうかといったレベルです。

3-3.トラック運送業

一方、トラック運送業に関しては、タクシー運送業・バス運送業と比較すると微妙に異なります。主な業務内容における運行業務は同じですが、荷役業務が含まれます。

そして、第二種運転免許ではなく、第一種運転免許で大丈夫です。そもそも第二種運転免許は、営利目的でお客さんを運ぶ際に必要な免許であり、荷物の輸送を行うトラック運送業において、第二種運転免許である必要はありません。第一種運転免許でいいことから、在留資格「特定活動」で与えられる日数は6か月間と他と比べても短めになっています。

バスやタクシーの場合は、海外の免許の切り替えや第二種運転免許の取得、その間に日本語研修や新任運転者研修を行うため、最大1年間の猶予が与えられます。第一種運転免許でいいトラック運送業の場合は、日本語研修こそ行いますが、基本的に免許の切り替えだけでOKです。

もう1つ異なるのは日本語能力についてです。トラック運送業はほとんどの特定技能外国人と同じく、日本語能力試験N4レベルで問題ありません。

タクシーやバスの場合は乗客とのコミュニケーションを要するため、一定以上の日本語能力が求められます。その点、トラック運送業はお客さんとのコミュニケーションは必要ないため、N4レベルで問題ないのです。

3-4.外国人ドライバーの受け入れ見込み人数

自動車運送業における外国人ドライバーの受け入れ見込み人数は、令和6年度から5年間で24,500人となっています。

自動車運送業全体で5年間で288,000人の不足が想定されるものの、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や労働環境の整備などを行い、24,500人の不足まで対応することができると予測しています。

※:法務省「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」

24,500人のうち、トラック運送業が19,000人、タクシー運送業が4,000人、バス運送業が1,500人という内訳になっています。

4.自動車運送業でネパール人を採用する流れ

特定技能「自動車運送業」を活用してネパール人ドライバーを採用する際にはいくつかのプロセスが存在します。特に自動車運送業においては、日本で使える運転免許証の有無で大きくことなります。

日本の運転免許証が既にある場合には、登録支援機関などへの相談を行いつつ、人材募集や面接を行っていきます。内定を出して、雇用契約書を締結したらビザの切り替えなどの手続きを行い、初任運転者研修などを受けさせて、本格的な仕事がスタートする流れです。運転免許証があれば、特定活動のビザを最初に取得する必要がありません。

一方、外国の免許しかない場合、国内に在住しているネパール人であれば、最初に特定活動のビザを取得し、運転免許の切り替えなどを行ってから特定技能への切り替えが始まります。ですので、日本に住んでいる場合には途中のプロセスが少し違うだけで、大きな違いがありません。

注意点

注意すべきなのが海外に在住しているネパール人を招くケースです。ネパールでは海外で働く人を対象に海外労働許可証が必要となるほか、海外労働保険に加入しなければなりません。入国してからの流れに大きな差はありませんが、海外に在住しているネパール人ドライバーを雇用する際には、注意が必要です。日本の運転免許を取得したらすぐに特定技能に切り替えなければならないのも重要なポイントとなります。

5.まとめ

タクシー・バス・トラック、どの業界においても人手不足が深刻化しており、物流や旅客輸送に大きな影響が出始めています。いかにしてドライバーの確保を進めていくべきかという状況において、ネパール人などの労働者を採用することにより、少しでも人手不足の改善につなげられます。ネパール人は日本人と同じような性格をしており、譲り合いの精神もあるため、マジメに仕事に取り組んでくれることでしょう。

今回ご紹介した内容を踏まえて、ドライバーとして日本で活躍したいネパール人を積極的に採用し、人手不足の状況から脱しましょう。

弊社では特定技能人材の採用などに関する無料相談も実施しており、気になる方はぜひともお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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