【違反してるかも!?】雇用者が注意すべき外国人労働者の労働時間の制限について解説!

執筆者:趙(外国人就労アドバイザー)

 労働時間や残業時間は、企業と外国人労働者とのトラブルの種と言われています。
「うちの外国人社員の労働時間をどのように設定・管理すべきでしょうか」と悩んだ企業の担当者の方も少なくないでしょう。

そこで本記事は、外国人労働者の労働時間及びその制限の基礎知識、注意点をご説明します。外国人材の活用に、ご参考になれば幸いです。

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目次

1. 外国人労働者に労働時間制限があるの?

外国人労働者の労働時間には、制限があります。具体的にいえば、

  1. 労働基準法による制限
  2. 外国人労働者のビザ(在留資格)による制限

という二重の制限です。

1-1. 労働基準法による制限

外国人労働者の労働時間には、まず日本人労働者の場合と同じく、労働基準法による制限がついています。労働基準法では、労働時間が以下のように規定されています。

労働基準法における労働時間の規定

以上の労働基準法の規定は、外国人労働者にも適用されています。

また、1日8時間、週40時間という労働時間の上限が、1社につきではなく、各社における労働時間の通算であることは、要注意です。

1-2. 外国人労働者のビザ(在留資格)による制限

日本にいる外国人は、必ずビザ(在留資格)を持っています。ところが、一部のビザには、労働基準法よりも厳しい労働時間の制限があります。このようなビザ所持の外国人を雇用する際、ビザによる制限も守って、その労働時間を設定しなければなりません。

具体的には、ビザ「留学」、「家族滞在」、「特定活動」(一部)の労働時間が制限されています。これらのビザをもっている外国人は本来、就労が認められません。彼らは出入国在留管理局にて「資格外活動」を申請し、許可を得れば、始めて就労できるようになります。

参考:資格外活動許可について|出入国在留管理庁

ところが、「資格外活動」の許可で就労できる外国人の労働時間は週28時間までです。また、この28時間は労働基準法の場合と同じく、1社につきではなく、各職場の労働時間の合計です。さらに、28時間には残業時間も含まれています。

週28時間以上、外国人に働いてもらう場合、外国人・企業両方に罰則が課される可能性があります(後述)。

外国人留学生、即ち「留学」ビザの外国人をアルバイトとして採用しようとする、あるいは採用中である企業が多いですので、以上のビザによる労働時間の制限をくれぐれも念頭に置いていただければと思います。

2. 外国人労働者の残業について

ところで、外国人労働者に残業してもらうことは可能なのでしょうか。本章では、外国人労働者の残業についてご説明します。

2-1. 一般労働者の残業限度時間

外国人労働者の残業は、まず日本人労働者と同じルールがあります。即ち

  1. 労働者に残業してもらうために、36協定を事前に結ばなければならない
  2. 残業限度時間がある

という2点です。

36協定

36協定とは、残業が発生する場合、事前に会社と労働者の過半数で組織される労働組合、あるいは労働者の過半数を代表する者との間で結ぶ労使協定です。労働基準法によると、1日8時間・週40時間を超えて労働者に働いてもらいたければ、36協定を結ばれなければなりません。

36協定では、残業の具体的な理由や、労働者数、1日・1か月・1年の残業時間数などが記載されます。36協定の書面を労働基準監督署に提出しなければ、労働者に残業してもらうことができません。

図1 36協定

参考:36協定とは|厚生労働省
参考:時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)|東京労働局

36協定の関連規定は外国人労働者にも適用されています。36協定を結ばなければ、日本人労働者だけではなく、外国人労働者に残業してもらうこともできないのです。

残業限度時間

労働基準法では、残業時間の上限が以下のように規定されています。

労働基準法における残業時間の規定

「複数月平均80時間」の具体的な計算方法は、下表の通りです。

表1-1 2023年度前半各月の残業時間数

年/月2023/42023/52023/62023/72023/82023/9
残業時間数807080909080

 

              表1-2 複数月の平均残業時間数             

        算定期間                           平均値                    
    2か月平均(8~9月)            85時間
    3か月平均(7~9月)            86時間
    6か月平均(4~9月)            81時間

たとえば2023年度前半の各月の残業時間数は表1-1です。表を見ると、毎月の残業時間数が確かに100時間以下です。
しかし、9月を基準に2か月、3か月、6か月の平均残業時間数を計算すれば、それぞれ85時間、86時間、81時間となり、80時間を超えてしまいます。結局、残業時間数が労働基準法に違反し、企業は違法となります。

さて、労働基準法における残業限度時間は、日本人・外国人労働者に平等に適用されています。外国人労働者にも、以上の制限の中でしか残業してもらえないのです。

2-2. ビザによる残業限度時間

既述のように、「留学」、「家族滞在」、「特定活動」(一部)のビザの外国人は、「資格外活動」の許可を得れば、週28時間まで就労できます。この28時間には、残業時間も含まれています。即ちこれらの外国人労働者が毎週残業できる時間数は、(28時間-所定労働時間)となります。

それ以上にこれらの外国人労働者に残業してもらえば、残業時間が労働基準法の限度内で、残業代を確実に払っても違法となり、罰則が課されます。

3. 労働時間違反の際の罰則

労働基準法などで規定された労働時間を超えて外国人労働者に働かせた場合、企業・外国人労働者に罰則が課される恐れがあります(既述)。

以下、

  1. 労働基準法の制限を超過した場合
  2. ビザの制限を超過した場合

に分けて、ご説明します。

3-1. 労働基準法の制限を超過した場合

労働基準法における労働時間の制限・残業限度時間は、これまで述べた通りです。また、労働基準法は外国人労働者にも適用されています。

労働基準法が規定した時間数を超えて外国人労働者に働かせた場合、労働者に罰則は課されませんが、企業の担当者に罰則は課されることがあります。

労働基準法では、企業の担当者に「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課されるという規定があります。また、以上の罰則は、現場のリーダーにとどまらず、企業の代表者まで及ぶ可能性があります。
参考:時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

3-2. ビザの制限を超過した場合

一方、ビザによる労働時間の制限に違反した場合、外国人労働者・企業両方に罰則が課されます。具体的には、「資格外活動」の許可で就労した外国人が、週合計28時間以上働いた場合、外国人労働者は不法就労罪に問われます。それと同時に、企業も不法就労助長罪に問われます。

罰則として、外国人労働者は罰金などが課され、最悪の場合、ビザを更新できず、ひいては退去強制・出国命令とされる可能性があります。強制されて日本から出る場合、5年内、再度日本に入ることができません。

一方、企業は3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に問われるのです。
参考:外国人の適正雇用について|警視庁

4. 労働時間違反を防ぐために企業が気を付けるべきポイント

それでは、企業は外国人労働者を雇用した後、どのように労働時間違反を防ぐべきでしょうか。本章では、3つのポイントをご提示します。

4-1.  雇用時に外国人労働者のビザを確認する

第一のポイントは、雇用時に外国人労働者のビザを確認する、ということです。外国人労働者のビザは、その在留カード(中長期在留の外国人に交付された身分証明書)の表面に記載されています。また、「資格外活動」の許可の有無が、在留カード裏面下端の「資格外活動許可欄」で記載されています。

第一のポイントは、雇用時に外国人労働者のビザを確認するということです。外国人労働者のビザは、その在留カード(中長期在留の外国人に交付された身分証明書)の表面に記載されています。また、「資格外活動」の許可の有無が、在留カード裏面下端の「資格外活動許可欄」で記載されています。

図2‐1 在留カード(表)

在留カード(表)

図2‐2 在留カード(裏)

在留カード(裏)

参考:「在留カード」はどういうカード?|出入国在留管理庁 

最終面接や内定の際、外国人労働者に在留カードの現物・データの提出を求め、カード自体は本物であるかどうか、及びビザの内容を確認したほうがよいです。

カード自体の真偽を確認するツールとして、出入国在留管理庁発行の「在留カード等読取アプリケーション」があります。このアプリケーションで在留カードのICチップの内容を読み取り、カードの真偽を確認できます。アプリケーションは、出入国在留管理庁のホームページからダウンロードでき、無料で利用できます。

図3 在留カード等読取アプリケーション

在留カード等読み取りアプリケーション

参考:在留カード等読取アプリケーション サポートページ|出入国在留管理庁
参考:アプリケーションの入手 パスコン版・Windows10以降はこちらから パソコン版・macOS版はこちらから スマホ版・Android版はこちらから スマホ版・iOS版はこちらから

ビザの内容の確認について、出入国在留管理庁のホームページでは、各種のビザのそれぞれの内容が掲載されています。また、任意の地方出入国在留管理局と連絡すれば、審査官は快く、ビザの内容、就労の可否を教えてくれます。

参考:在留資格一覧表|出入国在留管理庁
参考:地方出入国在留管理官署|出入国在留管理庁

4-2. 労働時間違反のデメリットを外国人労働者に伝えておく

また、内定後研修などを機に、労働時間違反のデメリットを外国人労働者に伝えておく必要があります。外国人労働者は、必ずしも労働基準法やビザの法律規則に詳しくないです。また、彼らの多くは、収入を増加させたいという思いから、長時間の残業を希望しています。

それに対し、企業は外国人労働者に、日本の法律制度における労働時間の規定、及びそれに違反した際の罰則を丁寧に解説し、労働者に理解してもらう必要があります。とりわけ、罰則にはビザ更新の不許可や出国命令が含まれていることを、外国人労働者に強調するのをお勧めします。

労働時間に関する法律制度はそれなりの量があり、専門性が強い内容も少なくないです。企業が自らそれに関する研修を行いきれない場合、研修会社や職業紹介者、外国人の支援機関と相談したほうがよいです。
日本企業様のための外国人理解ブックダウンロードはこちら

4-3. 労働時間の管理を徹底して行う

最後に、労働時間の管理を徹底的に行うのは、労働時間違反の予防に有効です。労働時間違反で罰則が課される際、「知らないうちに制限を超えてしまって申し訳ございません」という言い訳は通用しませんので、日常的に注意深くシフトを作成し、また確実に外国人労働者の出勤・退勤時間を把握する必要があります。

ここで特に注意すべきなのは、外国人労働者の他社での労働時間の把握です。既述のように、外国人労働者の労働時間の上限が、在職中の会社における労働時間の合計です。そのため、外国人労働者の労働時間を管理する際に、労働者にダブルワークの有無及び副業の勤務先におけるシフトや出勤・退勤時間も丁寧に尋ねる必要があります。

言語の壁もあり、外国人労働者は必ずしも十分に自らの副業先での労働時間がわかりません。その際、企業は自ら副業先と連絡し、協力を求めたほうがよいです。
外国人労働者とのコミュニケーションマニュアルはこちら

5. よくある質問

外国人労働者がダブルワークをする場合の労働時間はどうなりますか?

既述のように、外国人労働者の労働時間は各会社における労働時間の通算です。また、1日8時間、週40時間を超えた分の労働時間が全部、残業時間とされます。

 そのため、副業先での勤務状況をふまえ、外国人労働者の労働時間を管理しなければなりません。

 また、外国人労働者が複数の会社と労働契約を結び、そのために労働時間が1日8時間、週40時間以上となった場合、残業代を支払う義務を負うのは、後から労働契約を結んだ会社です。

外国人労働者の労働時間を、日本人よりも長く設定できますか?

労働基準法及びビザの制限を守り、外国人労働者の了承を得ることができれば、外国人労働者の労働時間を日本人のそれよりも長く設定できます。

 但し、残業分の労働時間に対して、確実に残業代を払わなければなりません。また、合理的な理由なく外国人労働者の労働時間を長く設定すれば、外国人労働者への差別として、外国人のビザ申請・更新の際、出入国在留管理局に指摘される可能性があります。

外国人労働者は日本人と賃金に差があってもよろしいですか?

役職の有無や業務範囲・経験年数・資格の差などの合理的な理由があれば、外国人労働者の賃金を、日本人のそれよりも高く・低く設定できます。但し、「日本語能力の差」が合理的な理由として認められません。

 一方、合理的な理由なく外国人労働者の賃金を日本人のそれよりも低く設定すれば、外国人のビザ申請・更新の際、出入国在留管理局に指摘され、修正を求められる可能性が高いです。外国人自身も、この点に反発し、企業に対する不信感を高める恐れがあります。

6. まとめ

以上、外国人労働者の労働時間制限をご説明しました。まとめると、外国人労働者の労働時間のルールについては、以下の2点の原則があります。

  1. 外国人労働者の労働時間について、日本人労働者と同じく労働基準法の規定が適用されています。
  2. 外国人労働者の労働時間は、外国人のビザの種類・内容により、労働基準法の規定よりも厳しく制限される可能性があります。

以上の原則に基づき、外国人労働者の労働時間を管理していただければと思います。
また、私たちJJSでは、無料相談を行っております。
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この記事を書いた人

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