【記入例あり】外国人の脱退一時金とは?手続き方法、必要書類等徹底解説!

執筆者:松里優祐(株式会社JJS 代表取締役)

外国人における脱退一時金は、外国人の方が企業を退職し母国へ帰国をすることとなった際に支払った年金保険料の一部を払い戻しできる制度です

最近、日本から一時的に帰国して脱退一時金を受け取り、その後再び日本に入国する外国人の方が増えています。この記事を読むことで、企業の担当者は脱退一時金の仕組みを理解し、このような状況に対応する方法を学ぶことができます。また、社会保険に加入することに対して消極的な外国人労働者に、その重要性を理解してもらう助けにもなります。

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目次

1.脱退一時金とは

脱退一時金とは、外国人労働者が、国民年金、社会保険(厚生年金保険)の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、支払った年金保険料の一部が戻ってくる制度です。

また、特定技能1号が創設され、在留期間の最長期間が5年となったこと等から脱退一時金の支給額計算に用いる月数の上限の見直しが行われました。
具体的には、2021年(令和3年)4月より(同年4月以降に年金の加入期間がある場合)、月数の上限は現行の36月(3年)から60月(5年)に引き上げられました。

1-1.外国人労働者に対して前もって脱退一時金について説明しましょう

外国人労働者の中には、社会保険の加入を拒否する方がいます。理由は手取り額が大きく減ってしまうためや、将来帰国した場合は、それまで支払った年金保険料が掛け捨てになってしまうと考えているためです。

そのような場合でも、社会保険は加入が必須となっているため、事前に脱退一時金について担当者から説明することをおすすめします。

2.脱退一時金の支給要件

脱退一時金の支給要件について、厚生年金保険と国民年金に分けて解説します。多くの企業の場合は厚生年金保険が対象となります。

2-1.厚生年金保険の場合の支給要件

厚生年金保険の脱退一時金の支給要件は以下のとおりです。

  • 日本国籍を有していない
  • 厚生年金保険(共済組合等を含む)の加入期間の合計が6ヶ月以上10年未満である
  • 障害厚生年金(障害手当金を含む)などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない
    (資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない)

2-2.国民年金の場合の支給要件

国民年金の脱退一時金の支給要件は以下のとおりです。

  • 日本国籍を有していない
  • 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でない
  • 保険料納付済期間等の月数の合計が6ヶ月以上ある(国民年金に加入していても、保険料が未納となっている期間は要件に該当しません。)
  • 老齢年金の受給資格期間(厚生年金保険加入期間等を合算して10年間)を満たしていない
  • 障害基礎年金などの年金を受ける権利を有したことがない
  • 日本国内に住所を有していない
  • 最後に公的年金制度の被保険者資格を喪失した日から2年以上経過していない
    (資格喪失日に日本国内に住所を有していた場合は、同日後に初めて、日本国内に住所を有しなくなった日から2年以上経過していない)

外国人が退職したときの手続き方法はこちらの記事で解説しています。

3.脱退一時金の手続き方法

ここからは脱退一時金の請求手続きについて解説します。

3-1.必要書類

必要書類は、脱退一時金請求書添付書類が必要になります。

脱退一時金請求書

脱退一時金の請求書は外国語と日本語が併記された様式となっており、以下の外国語に対応しています。

英語/中国語/韓国語/ポルトガル語/スペイン語/インドネシア語/フィリピノ(タガログ)語/タイ語/ベトナム語/ミャンマー語/カンボジア語/ロシア語/ネパール語/モンゴル語

請求書は下記の日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
脱退一時金に関する手続きをおこなうとき

添付書類等

書類名確認事項
パスポート(旅券)の写し
(氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格の確認できるページ
本人からの請求であることの確認   
日本国内に住所を有しないことが確認できる書類
(住民票の除票の写しやパスポートの出国日が確認できるページの写し等)
日本から出国していることの確認
受取先金融機関名、支店名、支店の所在地、口座番号、請求者本人の口座名義であることを確認できる書類(金融機関が発行した証明書等。または請求書の「銀行の証明」欄に銀行の証明でも可)受取可能な金融機関であることおよび請求者本人名義の口座であることの確認
基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類年金の加入期間の確認
代理人が請求手続きを行う場合は「委任状」受任者からの請求手続きであることの確認
→委任状様式はこちら
参考:日本年金機構「脱退一時金を請求する方の手続き」

3-2.提出先・提出方法・提出時期

請求者(本人または代理人)が、脱退一時金請求書および添付書類を日本年金機構等へ提出をします。

区分内容
提出先日本年金機構本部または各共済組合等
※加入していた制度およびその期間により提出先が異なります。
提出方法 郵送・電子申請
※旅行など就労以外の目的で来日した場合には、年金事務所または街角の年金相談センターの窓口での提出が可能です。
提出時期短期滞在の外国人が日本の住所をなくして出国後2年以内
参考:日本年金機構「脱退一時金を請求する方の手続き」

書類作成で何かご不明点がありましたらお気軽にお問合せください。

3-3.脱退一時金請求書の記入例

請求書自体は書くことはそこまで多くありません。書類に不備があると、支払いまでに時間がかかってしまうので、不備がないように記入を行いましょう。下記は実際の脱退一時金請求書と記入する項目です。

請求者氏名・振込先口座等の記入

「4.請求者氏名、生年月日および離日後の住所」欄および「5.脱退一時金振込先口座」欄については、アルファベットの大文字での記入が必要です。

住所の記入

請求書に記入する住所については、離日後の日本国外の住所を記入しましょう。日本国内の住所を記入すると支給されません。

口座名義の記入

請求者本人の口座名義欄については、金融機関に登録している口座名義を正確に記入しましょう。
また、日本国内の金融機関を指定する場合、「請求者本人の口座名義」欄に『カナ氏名』での記入が必要です。

参考:日本年金機構「脱退一時金の請求書を記入するにあたって、どのような点に注意すればよいですか」

4.脱退一時金の計算方法

計算式は次のとおりです。

被保険者であった期間の平均標準報酬額 × 支給率 = 支給額

支給率は被保険者であった期間により変わります。下記が支給率表です。

被保険者であった期間支給率
6月以上12月未満0.5
12月以上18月未満1.1
18月以上24月未満1.6
24月以上30月未満2.2
30月以上36月未満2.7
36月以上42月未満3.3
42月以上48月未満3.8
48月以上54月未満4.4
54月以上60月未満4.9
60月以上5.5
参考:日本年金機構「脱退一時金の制度」


給与20万円(標準報酬月額20万円) 賞与年間30万円(標準賞与額30万円)社会保険加入期間3年の場合

計算方法
(20万円×36ヶ月+30万円×3回)÷36ヶ月=225,000円
225,000円×3.3 = 支給額745,000円

尚、支給額から所得税は引かれますが、還付申告をすることで所得税は還付されます。

制度が改正され2021年4月から支給上限が3年から5年に

2021年4月から支給上限が3年から5年に変更されています。前述した支給率は制度改正後の支給額です。
そのため、被保険者であった最終月が2021年(令和3年)3月以前の場合は、これまで通り36月(3年)を上限として支給額が計算されます。

5.脱退一時金の注意点

ここからは脱退一時金の注意点を解説します。

5-1.脱退一時金を受け取ると請求する以前の期間が年金加入期間ではなくなる

脱退一時金を受け取ると、脱退一時金を請求する以前のすべての期間が年金加入期間ではなくなってしまいます。したがって、日本の老齢年金を受け取る可能性などを考えた上で慎重に検討したほうがいいでしょう。帰国後に再来日する可能性が高いのであれば、受け取らないという選択肢もあります。

5-2.住民票の転出日以降に請求書を提出する

前述したように、日本年金機構が請求書を受理した日に、外国人本人は日本に住所を有していないことが必須となります。そのため、出国前に日本国内から請求書を提出する場合には、住民票の転出(予定)日以降に請求書を日本年金機構へ提出する必要があります。郵送の場合には、転出(予定)日以降に到達するように送付が必要です。

6.よくある質問

最後によくある質問に対する回答です。

ここに記載されている質問に加えて、脱退一時金や外国人採用に関する他の疑問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせください。ご質問や興味のある点について、詳しくお答えいたします。

脱退一時金にかかる所得税の還付請求はできる?

脱退一時金が支払われた後、約20%は所得税として引かれます。しかし、受け取ってから5年以内に確定申告をすることで所属税の還付を受けることができます。

一時帰国(再入国)でも請求できる?

一時帰国をするだけで、近い将来、再入国する予定の方も脱退一時金は請求できます。一時帰国の場合でも日本国内に住所を有していないことが要件となるので注意が必要です。

また、最近、外国人労働者の間で見られる一つのトレンドは、休暇中に一時帰国する際、一度雇用契約を終了(退職手続き)し、再入国後に同じ職場と再度雇用契約を結ぶ方法です。この方法を採用する場合、新たにビザを取得しなければならず、申請が不許可となるリスクもあります。したがって、この方法はおすすめできません。

申請後いつもらえる?

書類に不備等がなければ、請求書の受付後、およそ4ヶ月後に支払いされます。送金と同時に「脱退一時金支給決定通知書」が送付されるので、こちらは大切に保管しましょう。

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この記事を書いた人

松里 優祐のアバター 松里 優祐 代表取締役

株式会社JJS(JapanJobSchool)の代表

主に「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務」を対象とした人材紹介と支援を行っており、年間300名以上の卒業生を輩出しています。
「日本人と外国人が一緒に働けてよかったを創る」というミッションを掲げ、外国人には入社前と入社後の授業を提供し、日本企業には外国人理解をしてもらえるきっかけづくりとして、Divershipを運営中。

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