【ベトナム人監修】日本人と似て真面目!ベトナム人の特徴・仕事観とは?
執筆者:三澤一孔(国際関係専門ライター)
監修者:ゴク(ベトナム国籍担当)
最近、日本の少子高齢化による労働者不足から外国人を採用する企業が増加していますが、そんな在日外国人の中で最も大きな割合を占めるのがベトナム人です。
ベトナム人は日本人と似ており、真面目で手先が器用といわれています。
ではなぜベトナム人は日本に働きに来るのでしょうか?またそもそもベトナムとはどのような国でどのような人が暮らしているのか。
東南アジアの国別の特徴を知りたい方
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1.東南アジアの国「ベトナム」について
1-1.ベトナムの基本情報
ベトナムは、インドシナ半島の東部海岸を占める南北に細長い国で、面積は約33万㎢と日本から九州を除いた面積とほぼ同じです。人口は約1億人で、民族は人口の約86%を占めるキン族(越人)のほか、53の少数民族からなります。言語はベトナム語で、多くが仏教を信仰し、キリスト教(カトリック)、カオダイ教の信者もいます。
ベトナムの首都であり、北部の中心都市がハノイで、その人口は約710万人。一方、人口が800万人を超える最大都市であり、活気にあふれているのが南部の中心都市、ホーチミンです。ホーチミンはかつてサイゴンと言われていましたが、独立の英雄で、ベトナム戦争を戦ったホー・チ・ミン主席の名を取り、改名しました。
近年、日本で働く外国人の中で中国人の次に多いのがベトナム人です。その数は2022年末現在、約49万人で今後もさらに増加することが見込まれます。
※:外務省「ベトナム社会主義共和国基礎データ」
※:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2022年末現在)
1-2.ベトナムの歴史
ベトナム北部は、2000年以上前から、漢、隋、唐といった中国王朝に支配されていましたが、938年に中国から独立しました。1884年にフランスによって植民地化され、「フランス領インドシナ」の一部となりました。このフランスによって植民地化されたというのが重要で、今でもベトナムにはフランス風の建物や教会があり、またベトナムに眠るルビーなどの鉱物の発見にもつながりました。
第二次大戦中には日本軍が進駐しますが、1945年8月に日本が敗戦すると、翌9月にホー・チ・ミン主席が「ベトナム民主共和国」として独立を宣言。
フランスなどとのインドシナ戦争、アメリカとのベトナム戦争を戦い、1976年に南北が統一した「ベトナム社会主義共和国」が成立しました。
ベトナム戦争後、ベトナムが社会主義体制へ移行したことで、新体制下での迫害を危惧したり、新体制になじめないなどの理由から、多くのベトナム人が日本を含む他国へ、難民として逃れました。
ベトナム戦争では、日本国内の米軍基地から米軍機がベトナムに飛び立ったり、戦闘で負傷した米兵が日本で治療を受けたりすることもありましたが、1983年にベトナムと日本は国交を樹立し、以後、良好な関係が続いています。
2.ベトナム人の性格・特徴
2-1.真面目な性格
一般的にベトナム人は日本人に似てまじめで勤勉な性格だといわれており、ベトナムの識字率は98%と非常に高いレベルを誇っています。また日本人と似て謙虚でもあるので、仕事面でもプライベート面でもベトナム人は日本人の良いパートナーとなるでしょう。
ベトナム人は日本人に似てまじめで、かつ責任感もあるので、任されたことは最初から最後までしっかり取り組みます。
2-2.手先が器用
ベトナム人はよく、真面目で勤勉だと言われ、そして手先の器用さにも定評があります。さまざまな織り物、絹製品、陶磁器、宝飾品、木工工芸品が作られています。
布を使って作る「布ぞうり」を展開していた会社が、日本ではなかなか技術を身につけられる職人が見つけられない中、ベトナム人の器用さに着目し、ハノイ近郊の農家の女性に作業を委託したケースもあります。
先端技術の分野でも、アジア太平洋放送連合(ABU)が主催するアジア・太平洋ロボットコンテスト(ABUロボコン)で、第1~18回(2002~2019年)の優勝回数で最多を誇っています。
※:国際協力機構『mundi』(2018年9月号)、「農村の女性たちの器用な手が編む布ぞうり」
※:ジェトロ:地域・分析レポート「【コラム】ベトナム人気は「優秀な人材」との評価に 在ベトナム12年の駐在員の視点から読み解く(前編)」
ベトナム人は手作りが好きで、また環境にも配慮するので、竹でストローを作ったり、カップやマイバックも手作りします。
2-3.プライドが高い
ベトナム人のプライドの高さを指摘する人は少なくありません。JICAベトナム事務所の清水所長は、官僚的で、日本以上にプライドが高い人が多かったり、年功序列が強かったりすることもある、と指摘しています。
JICAの海外協力隊の隊員としてベトナムで活動した人たちからも、上の権威は圧倒的、学歴や年齢を超えた連携が難しいこともある、という声も聞かれます。
真面目でプライドも高いため、日本語を勉強している学生たちも間違いを恐れて話すことを避けることもあったそうです。何だか日本人と似ていると思いませんか?
相手がやってきたこと変えることは、その人がやってきたことを否定し、プライドを傷つけることにもなりかねないので、すごく気を使ったという体験談もあります。
※:国際協力機構『クロスロード』(2022年9月号)「派遣国の横顔~知っていますか? 派遣地域の歴史とこれから[ベトナム]」
※:同 真摯な態度で信頼関係を構築
3.ベトナム人の仕事観・恋愛観
3-1.家族を大切にする
ベトナム人は、家族を大切にすることでも知られています。独立の英雄、ホー・チ・ミンはかつて、「よい社会とはよい家族のことであり、その逆もまた真実です。社会の核心は家族です」と話したそうです。
その考えは最近でも強く残っていて、日本に留学した経験のあるベトナム人は、ベトナム人と日本人の違いを聞かれて「ベトナム人の特徴は、家族を思うこと。正月にどんな遠くでも帰省する。そして家族で話し合うことを誇りにしている」と答えています。
子どもは将来、親の面倒を見るのが当然と考え、親により豊かな生活をしてもらうために働いているような人も多くいます。日本で働くベトナム人は、ベトナムの家族に給料の多くを仕送りしており、「仕送りで御殿が建つ」ともいわれているそうです。
また、家族だけではなく、友人や知人も家族と同様に大切にします。そのことが仕事や日々の暮らしにつながることも多くあります。
ベトナム人はお正月や特別なイベントの時は海外にいても必ずベトナムの実家に帰ります。
※:帝京大学短期大学紀要「BRICs諸国の後を追う新興工業国ベトナム」(宮地利彦)
※:ENGLISH JOURNAL ONLINE「ベトナムで英語は通じる? ベトナム人の性格は?」
3-2.好奇心旺盛で勤勉
ベトナム人は、勤勉な上に、好奇心が旺盛です。その結果、勉強にも打ち込み、優秀です。
ベトナムの歴史は、中国による支配や干渉、フランスによる統治、日本による占領、ベトナム戦争と、苦難の歴史でもありました。ジェトロの地域・分析レポートでは「この国難が、いかに生き延びるか、敵を撃退するためにいかに創意工夫するかの遺伝子を国民に植え付け、育てきたと言えるのではないか」との分析が紹介されています。
ベトナムは現在、国として教育の普及に力を入れています。ベトナムの初等教育や中等教育の修了率は、タイやインドネシア、フィリピンといった、ベトナムよりも所得水準が高い周辺国と比べて同じくらいか、むしろ高く、基礎的学力の高さにつながっていると考えられます。
ASEAN主要国の教育修了率(2012~2018年) (単位:%)
注:2012~2018年の期間内に入手できた最も新しい年次のデータ。
※:ジェトロ:地域・分析レポート「【コラム】ベトナム人気は「優秀な人材」との評価に 在ベトナム12年の駐在員の視点から読み解く(前編)」
日本にいる多くのベトナム人は働きながらも日本語を勉強しています。私の友人は仕事を掛け持ちしながら日本語も勉強していました!
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3-3.レディファーストが常識
ベトナムでは、日本よりも女性に対する気遣い、レディファーストの習慣が浸透しています。
荷物をさりげなく持ってあげることは、当たり前のこと。タクシーに乗るときは、まずは女性のためにドアを開けて、自分は最後に乗る、レストランではソファ席に座らせる、などは、ベトナム人女性が考える最低限のレディーファーストです。
プライベートで女性と食事をするときは、男性が払うのがベトナムの習慣です。特に年齢が離れていて、こちらが日本人であれば、女性は男性が払うと思うこと多いようです。
部下を食事に誘った場合は、女性社員と二人での食事はもちろん、複数で行った場合でも、全員の食事代を支払うのが無難です。
ベトナムには3月8日と10月20日の年に2回、女性の日があり、その日は家族や親せきの女性や職場の女性に男性はお花やプレゼントを渡します。また、お祭りのときやクリスマス、お正月の時も常に男性は女性にプレゼントを贈ります。
4.ベトナム人が日本で働く理由
4-1.親日国
1973年の日本とベトナムの国交樹立から2023年で50年を迎えました。東京・代々木公園で毎年開催されているベトナムフェスティバルは、ベトナム政府が唯一公認する海外の交流イベントで、2023年のフェスティバルには20万人が来場。開会式には、秋篠宮ご夫妻の次女・佳子さまが出席されました。
2008年の第1回のフェスティバルの企画から関わる青柳陽一郎共同委員長(衆議院議員)は、「日本とベトナムの関係は非常に良好」と話しています。
コロナ禍で多くのイベントが中止となりましたが、ベトナムフェスティバルはベトナム側の「とにかく開催してほしい」との強い要請を受け、感染対策を万全にした上で開催が続けられました。そこには日本で働く約46万人のベトナム人を勇気づけたいとの思いが込められていました。
※『国際開発ジャーナル』(2023年6月号)、「国会議員の目 議員外交と国際交流で『選ばれる日本』に」
4-2.給与
ベトナム人が日本で働くことを選ぶ理由の一つに、母国で得られる収入と日本で得られる収入との差の大きさがあることが考えられます。では、日本で働くことで、どれくらいの収入を得られているのか、実際の調査結果からみてみましょう。
ベトナム、フィリピン、中国からの技能実習生を対象に調査をした結果をまとめた「外国人技能実習生の収支検証」(※)によると、ベトナムの首都(ハノイ)での最低賃金は月額約2万円で、日本の最低賃金の8分の1です。
日本での手取り額の平均は月額約15万3,000円で、約3年間、働いて得られた収入の平均は約595万円となっています。
一方で、来日するためにかかった送り出し機関や紹介者への支払い(教育費や食費、健康診断など各種手続きの費用など)、来日準備期間中の生活費などの費用が平均約109万円かかっています。収入から費用を引いた「収益」は約486万円でした。
調査対象者がベトナムで得ていた年収の中央値は約31万円だったため、日本で3年間働くことで、15年分以上の収入を得ることができたことになります。日本での手取り額が一番少なかった人でも、ベトナムでの年収の中央値の10年分以上になっています。
なお、ベトナムの経済発展によって、ベトナムと日本の賃金格差は大きく縮まっています。2019年度は日本の最低賃金はベトナムの8倍ですが、2011年は約24倍でした。
4-3.生活環境
日本に住むベトナム人の数は過去10年間に9倍になっています。ベトナム以外にも日本との賃金格差がある国もあることから、経済的な事情だけが日本にベトナム人が増えた理由とは考えられません。
日本とベトナムは8世紀ごろから交流の歴史があります。漢字や科挙の制度、大乗仏教、儒教などは中国をはじめとする北東アジアの文化です。こうした歴史や文化があることを紹介した上で、山田滝男・駐ベトナム大使は、次のような分析を紹介しています。
「ベトナムが歴史的、文化的に『北東アジア性』の高い国であり、それに関連する諸要因が日本とベトナムの間にユニークな「共感や共鳴」を生み出している」
文化的にも近く、多くの同胞もいて、お互いの理解が深まっていることが、多くのベトナム人が日本に来る要因となっているようです。
※:一般社団法人霞関会「大使館の窓から」~『北東アジア』史の中のベトナム(日越間の「共鳴と共感」)
5.ベトナム人と働く上でのポイント・注意点
5-1.家族・行事のための一時帰国
家族を非常に大切にするベトナム人にとって、家族の重要な行事や、不幸があったときになどに、母国に帰りたい気持ちは、とても強いものがあると考えられます。
また、一度、母国に帰って、家族と再会した後、仕事に対してさらに前向きになったという報告も多くあります。
ベトナム人から一時帰国の希望があった場合は、理由を確認し、有給休暇や忌引休暇などの扱いでできるだけ希望に沿ってあげることが望ましいでしょう。再入国の手続きや、必要に応じ監理団体への報告・了承なども必要もなります。
5-2.日本語能力の配慮
日本で働く多くの外国人が日本語能力試験(JLPT)を受けています。在留資格「特定技能」で日本に滞在するにはN4以上の日本語能力が必要です。しかし、この級では基本的な文法と単語しか学んでいないため、簡単な日常会話ができるというくらいです。
業務の説明で使うような難しい日本語を理解することは難しいと感じる外国人が多く、「やさしい日本語」など、わかりやすい説明を心掛けることが大切です。ただし、ベトナム人に関しては、日本語の上達が早いとも言われています。
日本で働いている、もしくはこれから働こうとしている外国人はどのくらいの日本語力を持っているのかはこちらの資料で解説しています
ベトナムに進出した日本企業を調査したレポートでは、ベトナム人の日本語習得について、次のような例が紹介されています。
- 業務で使用する共通語は日本語で、時間内に日本語教室を開いている。
- 使用言語はベトナム語か日本語。組み立ての作業基準は、日本語のものをベトナム語に訳して使用し、ベトナム人が作業者に教えることを徹底している。
- 安全意識の定着のため、親会社で使用していて、朝・昼・夜関係なく使える日本語の挨拶言葉を導入、定着させている。
※:帝京大学短期大学紀要「BRICs諸国の後を追う新興工業国ベトナム」(宮地利彦)
5-3.人前でなるべく叱らない
日本でも、人前で叱ることは、従業員や仲間のやる気を下げることが認識されるようになってきました。プライドの高いベトナム人にとっては、とくに気をつけるべきことの一つでしょう。
ベトナム人の間では、「上司やリーダーは分かっていても注意しない」「注意をしてうらまれることを避ける思考が強く、間違ったことでもそのまま見過ごしてしまう」という傾向があることも指摘されています。
その他、日本の企業では当たり前のことでも、ベトナム人には当たり前ではないことがいくつかあります。日系企業で働くベトナム人がよく見かける日本人の行動の中で、多くのベトナム人が文化の相違を感じることとして、次のような行動が挙げられています。
- 日本人上司は、良い結果だけでなく、良くない結果や問題が生じた場合も率直に報告することを求める
- 日本人はベトナム人部下に、仕事の納期を守るよう求める
- 日本人は、業務上の問題点があれば徹底的に追求し、必ず有効な解決方法を探しだす
- 日本人はベトナム人に、品質管理や事務管理は細かい側面についても徹底して行うことを求める
- 日本人はベトナム人部下に対し、たとえ些細な事柄であっても、会社の規則に従うよう求める
- 日本人はベトナム人に、仕事の始業時間や会議が始まる前には必ず到着することを求める
- 日本人はチームワークを重視する
]※:帝京大学短期大学紀要「BRICs諸国の後を追う新興工業国ベトナム」(宮地利彦)
※:亜細亜大学アジア研究所『アジア研究所所報』第189号、「ベトナム人の勤勉さに対する評価を分けるもの」(北嶋誠士)
ベトナム人に叱ると、そのあと良い関係を築くことが難しくなる可能性があるので、なるべく叱らず、褒めて伸ばすことをお勧めします。
まとめ
ベトナムと日本は、1000年を超える交流の歴史があり、文化的にも非常に近いものがあります。ベトナム戦争後、難民として日本に来た人、その子どもたちも多く暮らしています。
在ベトナム日本大使館のウェブサイトでも説明されていますが、近年、日本に働きに来るベトナム人の多くは、「日本で職業スキルを身に付けたい」「家族の生活をより良いものにしたい」という夢を持っています。
違いを乗り込え、むしろ違いを楽しみながら、よいよい関係を気づいていきたいものです。
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