飲食業における外国人採用の重要性とハサップ教育を行う方法

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

日本の就業者数は2025年4月時点で6796万人と33か月連続で増加しており、数字だけを見ると、人手不足とは無縁な状況と言えるかもしれません。しかし、産業別で見ると、就業者が増えている産業もあれば、減っている産業もあり、必ずしも全ての産業において人手が足りているわけではないのです。特に飲食業は2025年時点においても慢性的な人手不足が続いています。
※:総務省統計局「労働力調査 (基本集計)2025年(令和7年)4月分」

飲食業界では、人手不足解消に向けて外国人の採用に力を入れるケースが目立っています。一方で、飲食業界で外国人を働かせる際に、衛生面に対する不安を感じる消費者が出てくる可能性があります。そこでポイントになるのがハサップ教育です。今回は飲食業における外国人採用の重要性や、ハサップ教育を行う方法などを解説します。

本記事を読むことで、飲食業において外国人を採用する際の情報やハサップ教育のやり方などがわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次

1.飲食店における人手不足の現状

飲食店においては、人手不足が目立っています。「宿泊業・飲食サービス業」の欠員率は4.4%と他の産業と比べても高めに推移している状況です。

※:農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」

本項目では、飲食店における人手不足の現状について解説します。

1-1.非正社員の人手不足が目立つ

2025年1月に行われた調査によると、正社員が不足していると感じる企業は全体の半数超、非正社員が不足していると感じる企業は3割ほどという結果が出ています。どちらも、ここ20年で最も高い水準に達しており、人手不足が目立ちます。

※:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)」

飲食店の場合、顕著なのが非正社員の人手不足です。飲食店のうち、実に6割ほどが非正社員の人手不足を感じており、業種別でもワースト2位の状況にあります。コロナ禍で著しく人手不足に陥り、ここに来て回復の兆しこそありつつも、それでも慢性的な人手不足の状態が続いているのです。

飲食業における非正社員の平均年齢は38歳で、全体の4割が35歳未満となっているほか、正規雇用の労働者が占める割合は10%以上20%未満が最も多く、飲食業界が非正社員によって支えられていることは明らかです。非正社員の人手不足が目立つことは、飲食業界全体の人手不足に直結すると言っても過言ではありません。

※:厚生労働省「第4章 外食産業における労働時間と働き方に関する調査」

1-2.飲食店における人手不足倒産が急増

近年深刻な状況となっているのが飲食店の倒産です。2024年における飲食店の倒産件数は、894件と過去最悪の数値となっています。コロナ禍での支援策が終了するなどして資金繰りが行き詰まったケースが目立ちます。

※:帝国データバンク「飲食店」の倒産動向調査(2024年)

人手不足倒産も急増しており、前年と比べて倍増するなど、今後も人手不足倒産が増えることが予想されます。背景には後ほど解説する賃金の問題も関係しており、事態の打開に向けて難題を抱えていると言えるでしょう。

※:東京商工リサーチ「2023年度(4-2月)「飲食業の倒産動向」調査」

1-3.低賃金を嫌う日本人が飲食店を敬遠

一般労働者の賃金は平均318万円ほどと、ここ数年で10万円ほど増えています。産業別で見ると、300万円以上の産業がほとんどを占める中、最も低かったのが、「宿泊業,飲食サービス業」で平均259万円ほどです。一般労働者の賃金と比較しても平均60万円、1カ月当たり5万円も下回る計算です。

※:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

2025年に入り、外食産業を中心に賃上げの動きが激しくなり、大企業を中心に大幅な賃上げを図っている段階にあります。一方で、後ほど解説する飲食店特有の忙しさや、非正社員の時給の問題など解決すべき課題は少なくありません。

※:飲食店ドットコム「2025年春闘、ゼンショー、すかいらーく、王将、松屋など外食大手10%超の賃上げも」

1-4.飲食店の忙しさも人手不足の要因

飲食店における人手不足の背景には、単なる賃金の低さだけでなく、「忙しさ」や「労働環境の厳しさ」も大きく影響しています。お昼時や夜などのピーク時には人が多く詰めかけ、一気に注文が入り、調理はもちろん、配膳、片付けなどを迅速にこなさなければなりません。

居酒屋などは深夜まで働くことも珍しくなく、土日祝日に駆り出されることも多いでしょう。飲食業で働く人の中には、私生活との両立が難しいと感じる人も多く、長く働き続けるのが困難だと感じても不思議ではありません。加えて、低賃金であれば、魅力を感じなくなるのは普通です。こうした厳しい労働環境は、労働者にとってハードルが高く、人材確保の妨げとなっています。

2.飲食業で外国人を採用するメリット

低賃金や忙しさなど、何かとマイナス面が強調されやすい飲食業において、外国人を採用するメリットが存在します。本項目では、飲食業における外国人を採用するメリットについてまとめました。

2-1.人手不足の解消

一番のメリットは人手不足の解消です。日本で働く外国人労働者は令和6年10月時点で2,302,587人と前年の同時期と比べて25万人ほど増えており、過去最高の人数となっています。そのうち、飲食店や持ち帰り・配達飲食サービスを含んだ外食業は20万人ほどとされています。

※:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

また、在留外国人数は、令和6年末で3,768,977人と前年の同時期と比べて35万人ほど増えて、こちらも過去最高を更新しています。在留資格「留学」は402,134人と1割以上を占めます。在留資格「留学」の外国人は資格外活動の許可を得ることで一定時間まで働くことができ、資格外活動で働く外国人労働者は398,167人とこちらも増加中です。

※:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」

飲食店や持ち帰り・配達飲食サービスを含んだ外食業で働く外国人20万人のうち、全体の半数を占めるのが留学生を含む資格外活動で、その次に永住者など身分に基づく在留資格と続き、この2つで4分の3を占めます。非正社員の割合が多い飲食業において、一定時間だけ働ける留学生や身分に基づく在留資格で働ける外国人を確保していくことが重要であり、人手不足の解消につながります。

※:農林水産省「外食業分野における特定技能外国人制度について」

今後注目されるのが、特定技能「外食業」の資格を得て来日する外国人です。現状で3万人ほどが特定技能「外食業」の資格を得ており、5年間の受け入れ上限は53,000人に設定されています。

2-2.インバウンド客に対応できる

近年、日本を訪れるインバウンド客が増加しており、2024年には4000万人近い外国人が日本を訪れています。そのため、飲食店や観光地においては多言語対応や異文化理解が求められている状況です。こうした中で、外国人労働者を確保することで、インバウンド客への対応がしやすくなります。

接客を行う際に言葉の壁がなくなり、スムーズなサービスの提供がしやすくなるほか、宗教や食文化に対する理解も深く、ハラール対応やベジタリアンメニューといった対応も柔軟に行われるようになります。飲食店はインバウンド客が利用する頻度も高く、ビジネスチャンスにもつながるため、外国人労働者の確保は人手不足の解消以外の効果にもつながっていくのです。

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2-3.働く意欲の高い外国人が多い

近年、飲食業界では、働く意欲の高い外国人労働者が大きな戦力となっています。母国では十分な収入や雇用の機会が限られているケースも多く、日本での就労に対して真剣かつ前向きな姿勢を持つ人が多い傾向にあります。

特定技能「外食業」における技能測定試験では、ベトナムやミャンマーの国籍を持つ外国人が多く合格しており、特定技能1号から2号への移行に向けて努力を重ねる外国人も少なくありません。人手不足に悩む現場において、こうした外国人労働者の存在は大きな支えとなっており、彼らが長期的に安心して働けるよう、職場環境や教育体制の整備が今後ますます重要になっていきます。

2-4.日本人スタッフにも刺激を与えられる

外国人労働者を雇うことにより、もともと働いていた日本人スタッフにも良い刺激を与えることができます。異なる文化や価値観に触れることにより、接客の姿勢や業務への取り組み方などの考え方が発展しやすく、柔軟な対応力がつきやすくなるでしょう。

また、外国人労働者がマジメに取り組む姿勢や楽しそうに仕事をこなしていく様子などは、日本人スタッフにとっても仕事への意識を変えるいい機会となります。語学や日本における常識などで協力し合う中で、チームとしての一体感も高まり、職場の雰囲気が前向きになる効果も期待できます。

3.ハサップとは

飲食店において非常に重要なものとしてハサップ(HACCP)があります。本項目では、ハサップとはどういうものか、なぜ外国人労働者に教育する必要があるのかについてまとめました。

3-1.ハサップ(HACCP)の概要

ハサップ(HACCP)とは、「Hazard Analysis and Critical Control Point」の略で、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳されます。食品の安全を確保するための衛生管理の方法であり、原料の確保から製造、調理に至るまで、ありとあらゆる危害要因を分析します。その上で危害要因を取り除く方法を見出し、厳しく管理していく手法がハサップです。

各工程の管理を細かく行うのが特徴であり、日本では2021年から食品を扱う事業者すべてが、ハサップに沿った衛生管理が義務付けられており、飲食店も同様です。ハサップが導入されることで、食中毒を防ぐだけでなく、衛生面でのクレームの防止、提供する食品の品質の安定化などにつながりやすくなります。

3-2.ハサップ(HACCP)を教育する意味

外国人労働者が飲食店で働き、お客さんに安心して食事をしてもらうには、ハサップの知識と理解が重要になります。衛生面に対する考え方は国によって異なることが多く、母国では当たり前のようにしてきたことが、衛生的にアウトというケースもあります。衛生管理の方法を世界水準で見直していき、衛生面の意識を高いレベルで均一化することで、リスクを低くできます。

ハサップに基づいた管理を行い、ルーティン化できれば、店全体の衛生レベルが保たれやすくなります。衛生面に対する考えが異なる外国人労働者を採用する際に、ハサップの教育を行うことは非常に大事です。

4.ハサップを外国人に教育する3つの方法

外国人労働者にハサップを教育する際は、日本人スタッフに伝えている内容をそのまま伝えたとしても、完璧に理解されない可能性があります。言語や文化の違いを踏まえたうえで、効果的な指導方法を工夫することが重要です。

本項目では、外国人労働者にハサップの内容をしっかりと定着させるための方法について紹介します。

4-1.やさしい日本語または母国語を活用

ハサップの内容は、専門用語や抽象的な表現も多く、日本人であってもすぐに理解するのは大変です。特に日本語に不慣れな外国人にとっては理解が難しいケースが多いと考えられます。そのため、「やさしい日本語」や、できる限り外国人本人の母国語を活用することが効果的です。

具体的で簡単な言い回しを意識することで、外国人にとってもわかりやすいものとなります。また、多言語マニュアルの活用も有効で、正確な理解を促すために非常に役立ちます。東京都保健所では英語や中国語、韓国語などさまざまな母国語に対応したハサップの動画や衛生管理計画、記録表などを作成しています。

※:東京都多摩立川保健所「日本語を母国語としない方にHACCPの動画を作りました」

4-2.視覚的な教材の活用

言葉だけでの説明では、正しい手順や衛生面の意識が外国人に伝わりにくいことがあります。そのため、イラストなど視覚的な教材を活用することもおすすめです。写真やイラスト、動画などを使えば、言語に関係なく一目で内容を理解できるようになり、理解度が高まります。

具体的には、手洗いの手順をイラストで作成し、調理場などに掲示することもできます。視覚に訴えることで、理解もしやすくなり、ミスの防止にも役立ちます。

4-3.理解度の徹底を行う

ハサップの教育で最も注意すべきなのは、外国人本人が理解したつもりになっていることです。「教えたから大丈夫」と思っていても、実際にどこまで理解できているかは、本人に尋ねないとわかりません。

そのため、外国人労働者に対しては、定期的にテストを行うほか、口頭での確認、実技指導などを実施して理解度の徹底を図ります。誤解がないかを見極め、必要に応じて繰り返し説明を行うことで、ミスを防げます。

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5.飲食店で外国人を採用する流れ

飲食店が外国人を採用するには、国外・国内それぞれのルートによって流れが異なります。

国外にいる外国人を採用する場合には送り出し機関や人材紹介会社などを通じて募集を行い、選考・面接を経て雇用契約を行います。その後、在留資格の取得に必要な書類を揃えてもらい、出入国在留管理局へ書類を提出し、在留資格を取得してから日本に入国し、就労となります。

一方、国内にいる外国人を採用する際には、求人媒体や大学や日本語学校などを通じて募集をかけて、面接を行います。面接の段階で在留カードを確認し、在留資格の確認を行います。日本語能力や業務への理解度、勤務可能な時間帯などを確認していき、採用後は、労働契約書を母国語やわかりやすい日本語で説明し、納得のうえで契約を交わします。

在留資格の変更や更新が必要な場合には、外国人本人もしくは行政書士などに依頼して出入国在留管理局で申請を行い、新たな在留カードが発行されたらその日から働けます。

詳しい採用フローについてははこちらで詳しく解説しています

5.まとめ

飲食店などの外食業は人手不足の状況が当たり前となり、特に非正社員の人手不足は深刻化しています。一方で、インバウンド客が増えたり、コロナ禍の影響も薄まったりしたことで、客足は戻りつつあり、いかに人手不足の解消を図れるかがポイントとなっています。こうした状況において、外国人労働者を採用することにより、人手不足の解消だけでなく、インバウンド客への対応力向上にもつなげられるでしょう。

今回ご紹介した内容を踏まえて、外国人労働者を積極的に採用し、ハサップの教育を行って衛生面の意識が高い従業員を揃えていき、ビジネスチャンスをしっかりとつかみ、業績を伸ばしましょう。

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