インドネシア人の8割以上はイスラム教!食べ物や服装、礼拝など一緒に働く際の注意点を解説
執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門
監修者:デリー(インドネシア担当)
インドネシア人を雇用しようと考えている企業の採用ご担当者様の中には、「宗教で禁止されている食べ物・服装は何だろう」、「日本人が注意すべき宗教の慣習は?」など不安に思っている方もいるかと思います。
そこで本記事ではイスラム教徒が多いインドネシア人と働く際に注意すべき、食事・服装・礼拝などの習慣について解説します。
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1.インドネシア人の8割以上はイスラム教徒
インドネシア人の8割以上はイスラム教を信仰しています。イスラム教以外では、キリスト教・ヒンドゥー教などを信仰している人がいます。
1-1.イスラム教はインドネシアの国教ではない
ほとんどのインドネシア人はイスラム教を信仰していますが、インドネシアは憲法で信仰の自由を認めており、イスラム教が国教というわけではありません。
ただし、インドネシア共和国憲法の前文で述べられている建国五原則のうちの1つに「唯一神の信仰」があり、無宗教は認められていません。
建国五原則で国家公認となっている宗教
- イスラム教
- キリスト教(カトリック、プロテスタント)
- 仏教
- ヒンドゥー教
- 儒教
この建国五原則の「唯一神の信仰」の中には、各宗教・宗派間で互いの信仰を尊重しあうことが述べられており、インドネシア人は自分が信仰している宗教以外も尊重する気持ちが強いです!
1-2.エリアによって信仰する宗教に偏りがある
インドネシアの8割以上がイスラム教を信仰していますが、地域によってはキリスト教やヒンドゥー教が多数を占めることもあります。インドネシア人の宗教を聞くときには、その人の出身を考慮に入れるといいでしょう。
地域によっても信仰する宗教に偏りがありますが、民族によっても偏りがあります!
例えば中華系の民族でイスラム教徒は少なく、キリスト教や仏教が多いです
1-3.イスラムの戒律はそこまで厳格ではない
インドネシア人のイスラム教徒は、中東のイスラム教徒に比べて緩く信仰している人が少なくありません。
例えば、イスラム教徒には「五行」という務(信仰告白・礼拝・喜捨・断食・巡礼)があります。
礼拝において本来は1日5回しなければなりませんが、人によっては1日に3回や1回しか礼拝を行わないという人もいます。
また、イスラム教では女性はヒジャブ(頭髪や体を覆う布)を身につけるべきだとされていますが、現在のインドネシアではヒジャブを着用する人もいれば、しない人もいます。各個人や各家のイスラム教の信仰の度合いによって、選択しているようです。
さらに、インドネシア人が五行などの実践をすべてやっていない場合でも日本人側からそのことを指摘するのは避けたほうがいいでしょう。礼拝や巡礼は時間・金銭的理由で、したくてもできない人もいます。「イスラム教の実践をしていない=信仰心がない」というわけではないので、日本人側は何も言わずに彼らの信仰実践を見守りましょう。
↓インドネシア人の特徴や性格が知りたい方↓
中東ほどイスラム教に厳くないインドネシアですが、インドネシア人の考え方の根底にはイスラム教の価値観があります!
年長者を敬うこと、社会的に弱い立場にある人を助けることなど、イスラム教の教えを基にした価値観で行動しています。
出典:外務省「インドネシア共和国(Republic of Indonesia)基礎データ」
インドネシア共和国観光省「Islands information」
2.【食事】イスラム教徒は豚肉とお酒がNG
イスラム教徒のインドネシア人を雇用したときに気を付けなければならないことの1つに「食事」があります。
イスラム教で信者が口にしてはいけないものは豚肉とお酒です。
それぞれイスラム教の聖典「コーラン」で禁じられています
豚肉 | ※豚肉を調理した調理場で作った食事を口にするのも禁じられています | 不浄な動物とされているため
お酒 | 暴力的になり、周りに危害を加えるため |
日本に来るインドネシア人の中にはお酒を飲むという人は時々いますが、豚肉を食べられる人はかなり少ないです。イスラム教への信仰がそこまで強くないとしても、子どもの頃からの食文化で「豚は不浄なもの」という意識があるため、食べるのを避けたがります。
また、豚肉やお酒を含んだ調味料や食材も食べることに抵抗がある人がいます。
日本では豚肉の油を使った調味料や、酒が含まれている調味料も広く販売されていますし、多くのレストランでそれらの調味料を使っています。
ですので日本でインドネシア人の同僚と食事に行く場合、できればハラールレストランに行くことをおすすめします。もし近くにハラールレストランがない場合は、特に豚肉を調理で使わない店を選びましょう。
豚肉・お酒を使った調味料や食材の例
豚肉 | ラード(豚の油)、ゼラチン(豚の皮)、ブイヨン、ラーメンのスープ、など |
お酒 | 醤油、みりん、酢(発酵過程でアルコールが含まれるため、人によっては問題ないと考える場合もあります) |
出典:国土交通省「多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル」
これも人によるのですが、調味料に豚やお酒が入っていることを気にしない人もいます。
しかし、明らかに豚肉が入っているのは気にする方が多いので、避けた方が無難です!
3.イスラム教徒のインドネシア人と働く際の注意点
食事に限らず、イスラム教徒のインドネシア人と働く際には以下のことを気をつけると、トラブルが少なくなるでしょう。
①礼拝(サラー)と断食(サウム)に配慮する
インドネシア人の同僚と働く際に私たちが接するイスラム教の習慣・行事は礼拝(サラー)と断食(サウム)です。
礼拝(サラー)
↓礼拝をしている男性
礼拝はイスラム教徒の義務である五行のうちの1つで、1日に5回、決められた時間にメッカの方角を向いてお祈りをします。
礼拝はどんなときにでも行うものなので、もちろん仕事中であっても仕事を中断してお祈りをします。基本的には人がいない静かな部屋の中で行うので、イスラム教徒のインドネシア人を雇用したときは、礼拝ができるような一室を用意するといいでしょう。礼拝は膝をついて座り、頭を床につけることもあるので、部屋にはカーペットを敷いておいてください。
また、礼拝する部屋にはメッカの方角がすぐにわかるよう「KIBLAT」というシールを貼ります。
通常の礼拝は部屋で行いますが、金曜日はイスラム教では集団礼拝の日と定められており、部屋ではなくモスクに行ってお祈りをします。本人の希望があれば休暇を与えられるように仕事を割り振るといいでしょう。
礼拝の前には体を清めるために両手や顔などを水で洗うので、会社内の礼拝室は可能な限りお手洗いに近い部屋にすると便利です!
また、お清めや礼拝は人にじろじろ見られて気分がいいものではありません。礼拝の時間帯は、なるべく日本人従業員が通りかからないような配慮も必要です。
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断食(サウム)
断食もイスラム教徒の義務である五行のうちの1つで、1年に1回、期間は約1か月間、日の出から日没まで飲食をしないというものです。
「断食」といっても、1か月間全く飲み食いをしないというわけではなく、日中は飲み食いをしないで、日没後に1日分の食事や水分を取ることになっています。
断食の時期はイスラム歴によって定められているため、西暦に直すと毎年時期が変わります。
断食の日程
開始日 | 終了日 | |
2023年 | 3月22日 | 4月20日 |
2024年 | 3月11日 | 4月9日 |
2025年 | 2月28日 | 3月29日 |
断食は、飲食を断つことで普段は感じにくい食べ物へのありがたみを感じ、恵まれない人々を思いやる行事です。断食をすることで欲望から解放され、心が清められると断食を肯定的に捉えるインドネシア人が多いです。
断食中は空腹や喉の渇きから体調不良になる人も少なくないです。ですので断食中はインドネシア人の健康に気を配ったり、インドネシア人従業員が仕事を休んでも会社が回るように柔軟にシフトを組むようにしてください!
②女性に配慮する
イスラム教徒のインドネシア人は、日本とは女性に対する価値観が異なる場合が少なくありません。日本の価値観だけでインドネシア人の女性に接し、トラブルにならないように気を付ける必要があります。
女性はヒジャブを被る人もいる
↓ヒジャブを被った女性
イスラム教では女性はヒジャブという布(頭髪や体を覆う布)を被らなければなりません。頭髪や体の線というような女性らしいところは、身内の男性以外には見せるべきではないとされているためです。
日本では屋内にいるとき、食事や挨拶をするとき、目上の人と接するときには帽子を外すのがマナーです。その考えを基に、ヒジャブを被っている女性を注意してしまうと、注意されたイスラム教徒の女性は戸惑ってしまいます。
ヒジャブを被った女性の同僚が取引先の企業の人と会う場合は、同行する日本人従業員が相手方に事前に「彼女は宗教的な理由でヒジャブを被っている」ということを伝えるとトラブルが避けられるでしょう。
軽くてもボディタッチはNG
イスラム教は、女性がヒジャブで頭髪や体の線を隠すことで女性らしさを出さないようにすることからも、性に対して厳格であることが伺えます。
そのため、たとえ日本人が「ちょっと」肩を触るなどの、軽度のボディタッチをしたと考えることであっても、不快感を覚えるインドネシア人は少なくありません。
偶然触れてしまった場合は、すぐに謝ればトラブルに発展することはありませんが、故意に触れるのは避けるべきでしょう。
③レバラン休暇に配慮する
断食明けの夜は、ご馳走を食べるなどの大きなお祭りを親戚や知人と行いますが、その前後にレバラン休暇という、イスラム教の中では長めの休暇があります。
例えば、2024年は断食明けのお祭り(レバラン)が4月10日から11日でしたが、その前後には政府がレバラン一斉有休消化日をいうものを定めています。2024年のレバラン休暇は4月6日から4月15日の最大10連休になりました。
レバラン休暇は、家族と過ごす人もいれば、海外旅行に行く人もいます。日本で働いているインドネシア人もレバラン休暇に合わせて一時帰国する人が多いです。レバラン休暇の帰国予定については早めに従業員に問い合わせると、その期間の業務の見通しがつきやすくなります。
外国人を採用する際はその国の文化を十分理解することが重要です
④左手を使うことに抵抗があるので配慮する
インドネシア人の中には、左手を使うのに抵抗がある人が多いです。例えば左手で物を渡すこと、何かを食べることは避ける傾向にあります。
特に左利きの人は、食事の際に左手で物を渡さないようにするなどの配慮が必要です。
しかし一方で、現在の若者や都市部にすむインドネシア人は、必ずしもこの考え方を強く持っているわけではないので、「左手を使うことに抵抗がある人もいる」程度の認識を持っておくといいでしょう。
これは宗教には関係のないインドネシアの文化で、左手は「不浄の手」と考えられており、使うのに抵抗感がある人が多いです!
出典:総務省「宗教的配慮を要する外国人の受入環境整備等に関する調査ームスリムを中心としてーの結果報告書」
4.まとめ
日本にいるイスラム教徒で最も多い国の1つがインドネシア人です。今後も特定技能などの就労ビザでインドネシア人を雇用する企業も増えるかと思います。
インドネシア人は基本的におおらかで真面目で、日本の企業風土にも適応しやすい人が多いです。イスラム教の価値観を雇用する企業側が理解することで、インドネシア人従業員にとっても日本人従業員にとっても働きやすい環境を整えることができるでしょう。
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