外国人が仕送りしている時の扶養控除の手続きは?必要要件や年末調整時の書類など徹底解説!
扶養控除とは、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に受けられる所得控除です。
この扶養控除は外国人も対象となり、条件を満たせば海外に住む家族も対象となります。
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1.そもそも扶養親族とは?
扶養控除の対象となる親族の範囲、国外居住であっても対象となる要件が決められていて、令和5年分(令和5年1月1日~12月31日の収入に対する申請)から要件が厳しくなりました。
1-1.扶養親族とは
扶養親族とは、次の4つの要件のすべてに当てはまる人のことをいいます。
扶養親族に当てはまる要件
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)、または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)、または市町村長から養護を委託された老人(養護委託制度による養護されている老人)であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと
この4つの要件に当てはまるかどうかは、その年の12月31日の時点の状況で判断されます。納税者が年の途中で出国したり死亡したりした場合は、時点の状況で判断されます。
6親等内の血族および3親等内の姻族には、自分の兄弟や叔父、叔母、6親等に該当する従兄弟の孫、3親等の姻族である配偶者の兄弟の子どもまで含まれます。
1-2.国外居住親族とは
国外居住親族とは、親族のうち、国内に住所を有せず、かつ、引き続いて1年以上国内に居所を有しない人(非居住者)のことをいいます。
国外居住親族のうち、配偶者以外の扶養親族のことを国外扶養親族といいます。
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2.【最新情報】令和5年分から国外居住親族の扶養控除等の要件が改正された
令和4年分までは、扶養親族の要件は、国内居住も国外居住も変わりはありませんでした。しかし、令和5年度分からは、国外居住親族が扶養控除となる場合の要件が厳しくなりました。
2-1.従来からの要件
令和5年分からの要件を確認する前に、従来の要件について確認しておきましょう。これらの要件は国内に居住する親族の扶養控除の要件と同様です。
対象となる親族の年齢が16歳以上である
その年の年末時点で16歳以上の親族は、他の要件をすべて満たせば、控除対象扶養親族となり得ます。
なお、16歳未満の親族(子ども)の養育に対しては、児童手当が支給されます。児童手当は日本に居住していれば外国人でも支給を受けることができます。ただし、子どもが日本国内に居住していない場合は、児童手当の支給対象とはなりません。
納税者と生計を一にしている
親族を扶養控除の対象とするためには、納税者と生計を一にしている必要があります。
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養などの都合で別居している場合であっても、余暇には一緒に生活するようにしている場合や、常に生活費、学資金、療養費などの送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
なお、親族が同じの家で生活している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。
年間の合計所得金額が48万円以下である
親族が扶養の対象となるのは、年間の合計所得金額が48万円以下の場合です。
所得金額は、収入金額とは異なります。収入金額から必要経費や公的年金控除・給与所得控除を差し引いた金額が所得金額となります。
他の控除対象扶養親族になっていない
例えば、兄弟で分担して親に仕送りをしているような場合でも、控除の対象に含めることができるのは1人だけです。兄弟が重複して控除の対象とすることはできません。
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2-2.改正後追加された要件:30~69歳は条件付きに
令和5年分から、扶養控除などの対象となる国外居住親族は、扶養親族のうち、3つの次の①から③までのいずれかに該当する者に限られることとされました。従来と比べると、30~69歳までの親族について条件が加わり、厳格化された形です。
改正後追加された要件
- 年齢16歳以上30歳未満の者
- 年齢70歳以上の者
- 年齢30歳以上70 歳未満の者のうち、次の①から③までのいずれかに該当する者
(1)留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
(2)障害者
(3)その居住者からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
出典:国税庁 令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)
それぞれの要件について、少し詳しく見てみます。
留学により国内に居住しなくなった者
これは、日本国内に住所または居所を持っていた親族のうち、外国の大学や高校等に留学することになり、留学の在留資格に相当する資格をもってその国に在留することにより、日本国内の住所やび居所がなくなった人のことです。
障害者
控除の対象となる障害者について、国税庁は以下のいずれかに該当する人としています。
控除の対象となる障害者
- 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
- 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター又は精神保健指定医から知的障害者と判定された人
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
- 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある者として記載されている人
- 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
- 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第11 条第1項の規定による厚生労働大臣の認定を受けている人
- 常に就床を要し、複雑な介護を要する人 ⑻ 精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の人で、その障害の程度が上記の⑴、⑵又は⑷に該当する人と同程度である人として市町村長、特別区の区長や福祉事務所長の認定を受けている人
多くの場合、日本で身体障害者手帳の交付を受けているか、障害福祉に関する日本の機関、自治体などの認定・判定を受けていることが条件となっています。
外国で交付されている「身体障害者手帳」は、④の「身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳」には該当せず、身体上の障害があるとして記載されていても、他の要件を満たしていなければ、控除対象の障害者には該当しません。
逆に言えば、国外居住の親族で、控除対象の障害者の要件を満たす可能性があるのは、
①精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
⑦常に就床を要し、複雑な介護を要する人
となります。
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人とは…
精神上の障害のため物事のよしあしを区別することができないか、できるとしてもそれによって行動することができない状態にあることをいいます。
出典:日本年金機構 年金Q&A(扶養親族等申告書における障害の記入方法)
常に就床を要し、複雑な介護を要する人とは…
たとえば、寝たきりのままの方等が該当します。
「常に就床を要し、複雑な介護を要する方」とは、引き続き6か月以上にわたって身体の障害により就床(床につくこと、寝ること)を要し、介護を受けなければ自ら排せつ等をすることができない程度の状態にあると認められる方のことです。排せつ等の日常生活に支障のある寝たきりのままの方は該当することになります。
出典:日本年金機構 年金Q&A(扶養親族等申告書における障害の記入方法)
日本の居住者から38万円以上の仕送りを受けている者
その年に、日本の居住する親族から38万円以上の仕送りを受けている親族は扶養控除の対象になります。
外国人労働者の増加や外国人を配偶者とする国際結婚の増加などにより、国外に居住している親族を扶養控除の対象とする納税者が増えてきました。そうした中、従来の制度では、「国外で一定以上の所得を得ている親族でも扶養控除の対象とすることができる」として、令和5年度分から国外居住親族の扶養控除に関する要件が改正されました。
年間の所得が48万円以下の場合、日本では厳しい生活となることが予想されますが、同じ48万円であっても、それほど困らずに生活できる国もあるということも、改正の背景にあるという指摘もあります。
30歳から69歳までの国外居住者は、ある程度の収入を得る能力があると考えられることから、基本的には扶養控除の対象外となりました。しかし、年間38万円以上の仕送りを受けている親族は、学生や障害者と同様、「真に所得が低い可能性を否定しきれず」として、控除の対象とされました。
また、仕送りをしている側については、38万円以上の仕送りにしているために、税金を負担できる能力が小さくなっている可能性も否定できない、と考えられました。
参考:財務省 令和2年度 税制改正の開設 所得税法等の改正 「日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用に関する改正」
3.扶養控除の金額
扶養控除の金額(収入から控除することができる金額)は、年齢などによって異なります。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 (16~18歳、23~69歳) | 38万円 | |
特定扶養親族 (19~22歳) | 63万円 | |
老人扶養親族 (70歳以上) | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
国外居住の70歳以上の扶養親族を控除対象にする場合は、老人扶養親族の同居老親等以外のものの控除となり、控除額は48万円となります。
なお、控除対象の親族が障害者としての要件を満たす場合は、扶養控除ではなく、障害者控除を受けることになります。
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4.扶養控除の適用を受けるための必要書類
扶養控除などを受けようとする場合に必要な書類(確認書類)は、次の通りです。この後、詳しく説明します。
扶養控除に係る確認書類
配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除に係る確認書類
出典:国税庁 令和5年1月以後に非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ
4-1.親族関係書類
「親族関係書類」とは、国外居住親族が居住者の親族であることを証明する書類です。以下のいずれかとなります。
- 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及び国外居住親族の旅券(パスポート)の写し
- 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(国外居住親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
親族関係書類が外国語で作成されている場合には、その内容を日本語に翻訳したものを添付しなければなりません。
4-2.留学ビザ等書類(留学ビザで国外に移住している場合)
留学ビザ等書類は、
- 留学の在留資格に相当する資格でその国に在留していること
- 日本国内に国内に住所や居所を有しなくなったこと
を証明するための書類です。
具体的には、以下のいずれかの書類です。
- 外国における査証(ビザ)に類する書類の写し
- 外国における在留カードに相当する書類の写し
留学ビザ等書類が外国語で作成されている場合には、その内容を日本語に翻訳したものを添付しなければなりません。
5.年末調整の際に雇用主に提出する書類
年末調整では、送金関係書類または38万円送金書類が必要になります。これらの書類は雇用主に提出します。
5-1.送金関係書類
送金関係書類とは、国外居住親族の生活費や教育費に充てるために、必要の都度、(複数の親族がいる場合は各人に対し)、取り引きや支払いを行ったことを明らかにする書類です。
- 金融機関による送金(為替取引)の記録
- クレジットカードの「家族カード」で商品を購入し、扶養している親族がその代金を支払った記録(利用明細書)
- 電子決済により扶養している親族が支払いをした記録
国税庁は、以下のように説明しています。
① 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
② いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、国外居住親族がそのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示等してその国外居住親族が商品等を購入したこと等により、その商品等の購入等の代金に相当する額の金銭をその居住者から受領し、又は受領することとなることを明らかにする書類
③ 電子決済手段等取引業者(注2)(電子決済手段を発行する一定の銀行等又は資金移動業者を含みます。)の書類又はその写しで、その電子決済手段等取引業者が行う電子決済手段の移転により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
出典:国税庁 令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係)
同一の国外居住親族への送金などが年に3回以上ある場合には、一定の事項を記載した明細書の提出と各国外居住親族のその年最初と最後に送金等した際の「送金関係書類」または「38万円送金書類」を提出または提示をすることにより、それ以外の「送金関係書類」の提出・提示を省略することができます。
クレジットカード利用による支払いについては、そのカードを利用して物品購入やサービス利用のためにそのカードを利用した日が、送金日となります。カード利用代金の引き落とし日ではありません。
5-2.38万円送金書類
38万円送金書類とは、送金関係書類のうち、居住者から国外居住親族(複数であれば各人)へのその年における支払いの金額の合計額が38 万円以上であることを明らかにする書類です。
6.よくある質問
まとめ
外国人労働者の増加や外国人を配偶者とする国際結婚の増加などにより、国外に居住している親族を扶養控除の対象とする人が増えました。以前には、あまり想定していなかった家族、扶養の形です。
住民が税金を公正に負担するという考え方から、実際に親族を扶養しているという事実や、日本の親族からの仕送りがなければ生活が難しいということを確認できたときに、収入の一部を控除し、税負担を和らげるという考えが、扶養控除などの基本になっています。
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