約10万人の外国人が建設業界に

日本で仕事をする外国人は年々増えていますが、建設業も例外ではありません。厚生労働省が毎年10月に発表している「外国人雇用状況の届出状況」によると、2019年10月末の時点で、約9万3,000人が建設業で働いているということです。
多くの会社が外国人雇用を進める中、いざ実際に外国人を雇おうとすると、どういった方法があるでしょうか。

外国人雇用方法その1【特定技能】

1.特定技能「1号」と「2号」

建設業で外国人を雇用する手段の一つが、特定技能制度を活用することです。特定技能は「1号」と「2号」の2パターンがありますが、今のところ「2号」の運用は始まっていないので、以下では「1号」で外国人を雇用するための様々な要件を解説していきます。

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2.外国人本人の要件

特定技能は政府が創設した仕組みなので、細かくルールが定められています。
特定技能で仕事をする外国人本人に対するルールとしてもっとも大きなものは、仕事をする能力を一定程度持っているかの証明が求められるというものです。これを証明するためには、所定の実技試験と日本語検定N4相当の試験に合格するか、もしくは技能実習を3年間経験する必要があります。
この他のルールとしては、本人が健康であることや、現地の人材派遣会社・日本の登録支援機関などが保証金を取ってないことなどがありますが、どれも普通にクリアが可能です。

3.雇用する会社の要件

特定技能で外国人を雇用する際、「協議会」への加入が必須となっています。建設業以外であれば単に各業種の協議会へ加入すればいいのですが、建設業の場合は特殊で、協議会の一員となっている「一般社団法人建設技能人材機構(JAC)」に加入することで、協議会へも加入したことになります。
ただし、JACへは年会費24万円に加え、月会費として特定技能人材1人あたり最低でも1万2,500円を支払わなければなりません。
また、特定技能制度は、「日本人を求人しても集まらないので、やむを得ず特定技能で外国人を雇用します」という立て付けです。なので、過去1年以内に従業員をリストラした経験のある企業は、この制度を使うことはできません。 他にも、建設業の許可を取得していることはもちろんのこと、建設キャリアアップシステムに登録することも要件となっています

4.雇用条件についての要件

建設業の場合、特定技能人材の給与は必ず月給制としなければなりません。建設業で働いている日本人は日給月給の人も多いと思いますが、特定技能の場合そうは行きません。現場での仕事は天候に左右される部分が大きく、時給制や日給制にだと毎月の収入が大きく変動します。これが技能実習制度における実習生の失踪率を高める要因となったため、建設業は給与に関するルールが厳しくなっています。
給与額についても、日本人と同等以上にしておかないと許可が下りません。特定技能の場合はこの部分の審査がかなり厳しく、「ハローワークへ出した求人票の写し」などの添付書類の提出が必要です。こういった書類を基に、特定技能人材と日本人とに給与格差がないかがチェックされます。
給与関係で厳しいポイントがある反面、雇用契約期間については自由な設定が可能です。特定技能「1号」は最長5年間ですが、必ずしも5年間雇用する必要はありません。特定技能人材と合意していれば、1年や3年だけ雇用するといったことも可能なので、自社の状況に応じた人材確保が可能です。もちろん、1年契約を更新し続けて5年間雇用しても構いません。

外国人雇用方法その2【技能実習】

1.実習生本人の要件

技能実習の場合、18歳以上であれば誰でも実習生になれます。特定技能のように試験を受けたりする必要もありません。その分、未経験者が多いので、入社してから戦力になるまで数カ月間は掛かってしまいます。
また、実習生自身の要件ではありませんが、技能実習の場合は会社の規模に応じて「人数枠」が定められています。例えば、常勤職員が1人の会社は1人、2人の会社は2人まで実習生を雇用できます。常勤職員が3〜30人の会社は年間3人までで、その後は常勤職員数を超えない範囲で追加雇用することが可能です。

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2.雇用する会社の要件

会社が実習生を雇用するには、特定技能よりは厳しいハードルがあります。技能実習では実習生にさせていい作業があらかじめ決められていて、それ以外の作業をさせることは認められていません。このため、実習生を雇用しようとする会社の業務の中に、所定の作業が存在することが重要な要件の一つです。
他にも、実習生を受入れるための申請をする時点で、「実習責任者」・「実習指導員」・「生活指導員」を従業員の中から選任しなければなりません。この中で注意すべきなのは「実習責任者」についてで、申請までに「養成講習」というものを受講しておかなければなりません。講習の内容は特に難しくなく、1日座って聴いておけばいいだけですが、受講者が多いので早めに受講予約をしておく必要があります。

3.雇用条件についての要件

技能実習の場合は、特定技能とは違って給与設定に関するルールはあまり厳しくありません。日本人と格差を設けてはならないというルールにはなっていますが、実習生の多くは未経験者なので最低賃金ベースでの雇用が可能です。ただし、最低賃金を多少上回る金額で雇用したほうが、能力の高い実習生を雇用できる確率が大きく上がるのでオススメです。年間数万円もしない金額で実習生の能力がかなり変わってきて、仕事面・生活面での手間がかなり下がります。

雇用契約期間については、3年間としておくことが一般的です。ただ、実習生も日本人を雇用するときと同じように、どうしても仕事が上達しない人や、会社の指示を聞かない人もあります。こういった場合の対策として、雇用契約を1年更新とすることも可能です。ただ、やはり基本は3年間なので、現地の人材派遣会社と事前に調整しておくことが欠かせません。

外国人雇用方法番外編【エンジニア】

建設業での外国人雇用手段として、いわゆるエンジニア(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)という方法を使っている会社もあります。
ただ、エンジニアは設計などをする人に対する資格で、特定技能や技能実習のように現場で働く人を雇用する手段ではありません。

人材会社の中には現場で働いてくれる外国人のエンジニアを紹介するところもありますが、法令で認められているものではありません。エンジニアを雇用して現場で働かせていることがもし入管に発覚すると、特定技能や技能実習の活用も最低5年間はできなくなります。エンジニアの雇用は、法令で定められた範囲内で行いましょう。

まとめ

今回は、建設業での外国人雇用手段として、特定技能、技能実習、エンジニアと見てきました。現場で働く外国人を雇用する方法としては特定技能と技能実習の2択で、どちらも一長一短あります。

ある程度技術を持っていて、即戦力としての活躍が必要であれば特定技能未経験から多少時間を掛けて育成していくのであれば技能実習というように考えてもらえればと思います。

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