この記事は「技能実習」の特徴や実態、メリット・デメリットをわかりやすく簡単に説明します。
技能実習とは
技能実習は発展途上国である母国にもどって日本の技術を伝えることを目的とした在留資格となります。今年の2020年7月17日に新たに職種が追加され、現在は82職種(148作業)が実習生の職種として認められています。
「3年定着率90%以上の人材採用手段?」
日本社会での認知度が上がってきた技能実習ですが、今や全国で40万人以上の実習生が活躍する時代になりました。彼ら・彼女らはベトナムやフィリピンなどから異国の地・日本にやってきて、建設現場や農家など、とりわけ若い日本人が働かないような場所で仕事をしてくれています。この技能実習制度、端的に表現すると「3年定着率90%以上の人材採用手段」と言えます。
定着率90%超えのワケ
技能実習制度を使って実習生を採用する場合、まずは3年間の契約となるのが一般的です。場合によっては1年契約となることもありますが、実習生などへのメリットが少ないので1年契約のケースは多くありません。
実習生はいわば日本に出稼ぎに来ているので、日本でなるべくたくさん仕事をして、なるべく多く貯金をして帰国したいと思っています。3年契約の途中で離職するケースがあるとすれば、「失踪」もしくは「途中帰国」のパターンです。とはいえ、失踪も全国平均で2%台ですし、途中帰国(どうしても会社になじめなかった、など)も高く見積もっても5%前後です。このため、実習生を受入れた企業がよほど彼らを冷遇しない限り、3年間は戦力として仕事をしてくれるわけです。
技能実習のメリット・デメリット
メリット
実習生を採用するメリットは、定着率以外にもあります。
・残業・休日出勤を嫌がらない
・仕事へのやる気に満ち溢れていること
です。「実習生は残業をたくさんする」と言うと「日本人は立場の弱い実習生に労働を強制している!!」と思われるかもしれませんが、実習生は日本に”出稼ぎ”に来ているので、たくさん仕事をしてたくさん収入を得たいと思っています。日本の中小企業としても、「なるべく残業は減らそうとしてるけども、急な受注増があると・・・。かと言って、日本人社員は快く残業してくれないし・・・」という状況の中、実習生は嫌な顔一つせず残業や休日出勤をしてくれるので、経営者や管理者にとってありがたい存在です。また、実習生と日本人では同じ仕事に対するモチベーションが圧倒的に違います。というのも、例えばある会社の月給が20万円だとすると、日本人にとってはもちろん20万円の価値でしかありませんが、実習生にとっては毎月200万円稼ぐようなものです(実習生の 一番多いベトナムだと、平均月収は2〜3万円)。多少たいへんな仕事でも、手にする給料の重みが日本人と違うため、実習生は高いモチベーションで仕事をしてくれるのです。
デメリット
発展途上国の外国人を受入れる制度と聞くと「安く労働力を確保できる」と考えがちですが、実はそうではありません。具体的に実習生の受入れを検討するとなると、まず監理団体(いわゆる「組合」)というところに問い合わせをして、実習生の紹介と実習生入国後の監理をしてもらう必要があります。
監理団体を使わず自社のみで実習生を受入れることも可能ですが、書類手続きがあまりにも煩雑 なので オススメできません。(現に、自社で実習生を受入れているのは全体の5%程度です)
このように監理団体が絡んでくるということは、必然的に 追加コストも発生してきます。受入企業は監理団体に毎月「監理費」を払わなければなりません。監理費の相場は35,000円前後で、実習生の給与プラ ス監理 費がランニングコストとして掛かってきます。監理費は安ければ2万円台の監理団体もありますが、サポート面がかなり手薄になることが考えられるため、安心して3年間実習生を受入れようとすると、監理費が安過ぎる監理団体は避けるべきでしょう。
また、監理団体は全国に3.000団体以上もあり、良いように言えば選択肢 がたくさんあります。監理費以外の 面では、監理団体の本部が自 分の会社から近いかどうかが判断基準の一つになります。実習生を受入れると何かしらトラブルが起きるので(日本人社員でも同じですが・・・)、そのときに迅速に対応してもらうためには、近くの監理団体のほうが好都合です。
技能実習の活用 オススメ企業は?
実習生を3年間雇用するためには様々な条件がありますが、中でも重要なのが「職種」に関するものです。先程も述べたように、現在は82職種(148作業)が実習生の職種として認められています。
なぜこのような職種の制限があるかと言うと、技能実習制度は国が作った制度で最初に述べたように実習生は「日本の進んだ技術を身につける」ために日本に来ていることになっているからです。
国の制度であるため、受入企業は労働法をはじめとする各種法令を遵守 しなければなりません。例えば、実習生を社会保険に必ず加入させなければなりませんし、社員が10人以上の企業であれば、就業規則も整備しなければなりません。細かいところで言うと、実習生から寮費などを控除する場合は、給与控除の労使協定も作成しておかなければなりません。
このように職種・作業もルールに従い、今までやったことがなかったかもしれない正確な賃金計算などができる企業が、技能実習のオススメ企業と言えます。逆に、「労働法なんか守ってたら会社潰れてまう!!」という会社、それから外国人(特に発展途上国出身の外国人)」を下に見るような会社は技能実習の活用をオススメしません。必ず実習生との間で問題が起きてしまいます。
実習生採用、一連の流れ
実習生の採用を決定し、監理団体とも契約ができれば、普通はその1カ月後ぐらいに面接を行います。Skypeなどウェブ面接で済ませるか(コロナ禍を除いて)現地面接にするかは、受入企業の意向や監理団体の姿勢によっても変わってきます。
面接後は 通常5カ月間現地で日本語を勉強し、ビザ(査証 )発給申請などを経て面接後約半年で実習生は日本に入国します。その後、さらに1カ月間日本語などの 講習を受けて、面接から約7カ月で実習生が入社してきます。
入社後は3年間仕事をするだけですが、途中に「技能検定試験 」というものを受けなければなりません。なぜなら、この制度は「技術を身につける」ための制度なので、きちんと技術が身についていることを証明しないといけないからです。受検するのは入社して約半年後に受ける基礎級と、約2年半後に受ける3級の試験です。基礎級は実習生向けに 作られたもので、練習を数回しておけば問題なく合格できる比較的簡単なものです。
ただし、万一不合格になると2年目に進むことができず帰国となります。3級の試験は日本人が受ける技能検定3級の試験と同等なので難易度は上がりますが、こちらは不合格時のペナルティーは特にありません。
実習生3年終わったら?
実習生が入社して3年満了を迎えると、基本の流れとしては母国に帰るということになります。ただ、3年経つと仕事にも慣れて手際も良くなり、もっと日本で仕事をしてほしいという実習生が現れるものです。この場合、実習生をさらに2年継続する、もしくは「特定技能」という別の仕組みで受入れを続けるという方法 があります。特定技能についてはここで説明するとあまりにも長くなるのでこちらのブログをご覧ください。
もう一つの「実習生をさらに2年継続する」という方法 はこれまたいくつか条件があります。
まず受入企業と監理団体が「優良 」である必要があります。受入企業が「優良 」かどうか はポイント制で判定されます。中でも配点が高いのは技能検定3級の合格者が 輩出しているかどうかです。3級試験不合格のペナルテ ィーはないと書きましたが、合格者を出しておかないと、実習生を2年間延長して受入れることはできません。この 他、実習生の日本語学習をサポ ートしているか、日本文化 に触れられるような環境を整えているかといった項目もポイントの査定対象となっています。
まとめ
最初にも書きましたが、実習生は「3年定着率90%以上の人材採用手段」です。ただし、国は「技術を身につける制度」としていて、「人材採用手段」とはしていないことに注意が必要です。(監 督官庁 の人に「人手不足解消のために制度使ってます!」というと、キツイ指導を受けます)こういった本音と建前があり、いざ受入れるにしてもいろいろと手間が掛かる制度ではありますが、求人を出してもなかなか日本人の応募がない中、定着してくれて残業もしてくれてモチベーションも高い外国人が来てくれるため、経営者にとってありがたい制度として数千もの企業が活用しています。
竹村 友希
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