【育成就労】外食分野はどう変わる?対象業務や受入要件・転籍ルールを解説

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門
監修者:大路(JapanJobSchool CSマネージャー)
「シフトが埋まらず店が回らない」「現場の負担が増える一方だ」とお悩みの店舗責任者や採用担当者様も多いのではないでしょうか。人手不足が続くなか、2027年4月からスタートする「育成就労制度」は、外食分野の新たな人材確保・定着の選択肢として期待されています。
この記事では、外食分野における受入上限数や「外食」「給食」の業務区分の違いをはじめ、受け入れ企業・外国人材双方の要件、2年の転籍ルールまでわかりやすく解説します。現場での日本語支援事例も紹介しますので、ぜひご活用ください。

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1.育成就労「外食業」とは
ここでは育成就労制度の目的や開始予定日、外食分野における受け入れ人数の上限について解説します。
1-1.育成就労とは
「育成就労制度」とは、従来の技能実習制度に代わり、2027年4月1日までにスタートする新しい在留資格制度です。これまでの技能実習では「発展途上国への技術移転(国際貢献)」を主な目的としていました。しかし育成就労制度は「人手不足分野における人材確保と育成」が目的です。
深刻な人手不足に悩む日本の産業現場において、未経験の外国人材を計画的に受け入れ、約3年間の実務や講習を通じて基礎的な技能を習得させます。そのうえで、中長期的に現場の力となる「特定技能1号」の水準まで育成・ステップアップさせることを目指す仕組みです。
【2026年9月】育成就労の事前申請が開始
2026年9月1日、育成就労制度施行に先立ち育成就労計画の認定申請の受付が開始されました。これは制度開始後の受け入れに向けて、あらかじめ必要な手続きを進められる仕組みです。
受け入れ企業は、外国人ごとに育成就労計画を作成し、認定を受ける必要があります。申請にあたっては、分野別協議会への加入を証明する書類や、各分野で定められた受入基準を満たしていることを示す書類などの準備が必要です。必要書類は分野によって異なるため、事前に対象分野の要件を確認しておきましょう。
なお、事前に認定を受けた場合でも、実際に育成就労外国人を受け入れられるのは2027年4月1日以降です。2027年春からの受け入れを検討している企業は、早めに準備を進めておくとよいでしょう。
1-2. 外食分野での受け入れ人数上限は5,300人
育成就労制度では、受け入れ分野ごとに一定期間内の「受け入れ見込み数(上限枠)」が定められています。外食業分野における育成就労の受け入れ見込み数は「5,300人」です。これは、約6万人枠が設定されている「飲食料品製造業」など他分野と比較すると、かなり限定的な枠といえます。
また特定技能(外食業分野)においては、2026年4月に新規受け入れに関する一時停止措置がとられました。外食業界における外国人材の確保は、全体として受入可能な枠が限られる傾向にあります。
しかし、日本語教育や技能習得サポートを徹底することで、長期的に活躍する人材になる可能性があります。育成就労の期間が修了しても「特定技能1号・2号」へ移行できるからです。育成就労をうまく活用して、長期的な視点で人材を育てましょう。
※参考:2028年度末までの受入れ見込み数の案が公表されました|公益財団法人 国際人材協力機構
2.対象業務区分は「外食」と「医療・福祉施設給食製造」
外食分野で育成就労生を受け入れる際は、自社がどの「業務区分」に該当するかを正しく理解しましょう。決められた法令の範囲内で業務を行わせることが重要です。
2-1.育成就労の業務区分は「外食」「医療・福祉施設給食製造」
外食分野における育成就労では、現場での作業内容に合わせて業務区分が整理されています。技能実習制度からの見直しを経て、主に「外食」(一般的な飲食店等での業務)と「医療・福祉施設給食製造」(病院や介護施設等での給食製造)という区分に再編・明確化されました。
| 業務区分 | 主な作業内容・概要 | 該当する主な事業所 |
| 外食業 | 飲食店における調理、接客、店舗管理等の全般的な作業 | 一般飲食店、レストラン、ファストフード、テイクアウト専門業者 |
| 医療・ 福祉施設 給食製造 | 病院、介護老人保健施設、社会福祉施設等における患者・利用者に向けた給食の調理・盛付等 | 病院、介護施設、保育所等の給食部門(または受託企業) |
2-2.接待・風俗営業はできない
外食分野で育成就労生を受け入れる場合には、法律上、従事させられない業務が設けられています。
具体的には、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)に規定する「風俗営業」や「特定遊興飲食店営業」を行う店舗・施設での業務には従事させることができません。
禁止される業務の例
①客の座席に同席して会話の相手をしたり、酒類を注いだりする「接待行為」をともなう業務(キャバレー、クラブ、スナック等での業務)
②遊興を行わせる店舗や、風俗営業に該当する区画内での一切の作業
育成就労生が従事できるのは、あくまで外食店舗や施設における「調理」「接客(風適法上の接待に当たらない通常の給仕作業)」「店舗管理」などです。店舗の営業形態や業務内容が制限に抵触しないか、事前に確認しておくことが必須となります。
※参考:特定の分野に係る育成就労制度運用要領(外食業分野の基準について)(令和8年7月10日) | 法務省・厚生労働省・農林水産省
3.育成就労生の日本語レベルと現場での支援事例
育成就労生を受け入れる際、現場のスタッフや店長が最も不安に感じる要素のひとつが「日本語で意思疎通ができるか」という点です。支援事例を参考にして、現場で適切な受け入れ態勢を整えておきましょう。
3-1.入社時の日本語レベルは「簡単な日本語」がわかる程度
育成就労制度で入国・就労を開始する段階での日本語要件は、基本的に「日本語能力試験(JLPT)のN5レベル」(または「日本語教育の参照枠」のA1相当以上)です。
N5レベルとは、「基本となる日本語を学び始めた段階」であり、具体的には以下のような会話・理解ができます。
【N5レベル】
N5は「お名前は?」「お仕事は?」「何歳ですか?」などの簡単な質問が理解できるレベルです。
まだ日本語を勉強し始めたばかりの人が受験するレベルのため、日本人側もゆっくり・はっきりと話すように心がけるといいでしょう。
「お先に失礼します。」「いらっしゃいませ。」のように、仕事で毎日使うようなフレーズは覚えてしまいます。まだ文法の知識も多くはないので、その企業で重要なフレーズは丸暗記してもらうといいでしょう。
日本語能力試験(JLPT)とは?N1保持者がレベルや難易を解説
専門用語や複雑な接客会話、早口の指示を一度で完全に理解するのは難しい段階です。そのため現場では、写真付きのマニュアルやイラストを活用したり、やさしい日本語でわかりやすく指示を出したりするような配慮が求められます。
採用予定の外国人の日本語レベルを具体的に解説しています。
▶ 「外国人の日本語レベルはどれくらい?」資料 をぜひご活用ください
3-2. 【支援事例】日本語力に合わせて業務を広げる育成ステップ
登録支援機関である株式会社JJSが、外食分野における外国人雇用を支援してきた経験をもとに、外食業において日本語力が十分でない状態から、徐々に店舗業務を任せられるようになるまでの一般的な育成の流れと注意点を解説します。
外国人材を受け入れた直後は、まず比較的高い日本語力を必要としない厨房業務から担当してもらい、本人の日本語力や技能の習得状況に応じて、ホールでの接客、レジ、電話対応など、より高い日本語力が求められる業務へと段階的に担当範囲を広げていくケースが一般的です。
以下では、それぞれの段階で任せる業務と、外国人材を育成する際に企業が注意したいポイントを具体的にご紹介します。
まずは厨房業務を担当してもらい、業務の流れを目で見て覚えてもらいます
衛生管理を伝えるポイント
衛生管理については、言葉だけで説明するのではなく、イラストや色分けなどを活用し、見ただけでルールが分かるようにすると理解しやすくなります。例えば、手洗い場に「正しい手洗い方法」のイラストを掲示したり、食材や調理器具を入れるかごを用途ごとに色分けしたりする方法があります。
日本語でのコミュニケーションが上達した段階で、徐々にホール業務を任せていきます。
この段階では、接客研修を実施したり、メニュー名や接客用語にひらがなを付けたマニュアルを用意したりする企業もあります。
実際に当社が支援しているとんかつ店では、お客様から「おすすめは何ですか?」などと質問された際に、外国人スタッフがスムーズに回答できるよう、よくある質問と回答をまとめた接客マニュアルを作成しています。
ホール業務に慣れ、注文内容や金額を正確に理解できるようになった段階で、レジ業務を任せます。
さらに日本語でのやり取りに慣れてきたら、デリバリー注文などの電話対応を任せる企業もあります。
このように、最初からすべての業務を任せるのではなく、本人の日本語力や業務の習得状況を確認しながら、段階的に担当範囲を広げていくことが、外国人材の育成において重要です。
4.育成就労者に課される要件
育成就労制度では、外国人材が段階的に技術や日本語能力を身につけられるよう、時期に応じた具体的な要件が設けられています。外国人材自身に求められる受け入れ時・1年経過時・3年経過時の要件を事前に把握しておくことが重要です。
4-1.受け入れ時の要件
日本語要件
受け入れ時点(入国時)では、原則として「日本語能力試験(JLPT)N5」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A1」以上の合格が求められます。
※ただし、技能実習生からの意向変更や特定の特例要件等により入国時にこれらの試験に合格していない場合でも、受入開始から1年経過時(最初の1年間)までに合格することを条件として受け入れが認められる規定が設けられています。
過去の技能実習経験による制限
過去に旧制度である「技能実習」の経験がある外国人材の場合、実習を行った期間等に応じて以下の制限が適用されます。
技能実習を2年以上行っている場合
原則として、技能実習で従事していた業務に対応する区分以外で、育成就労を行うことはできません。そのため、異なる職種・業務区分を選択することはできず、過去の技能実習に対応する業務区分で育成就労を行う必要があります。
技能実習を3年以上行っている場合
育成就労の通算期間に関する基準を満たさないため、原則として育成就労計画の認定を受けることができません。そのため、育成就労制度ではなく、「特定技能」など他の在留資格への移行を検討する必要があります。
4-2.就労1年経過時・3年経過時の要件
育成就労では、就労1年経過時と3年経過時に、技能と日本語能力の到達要件が設定されています。それぞれの時点で求められる試験・日本語水準を確認しておきましょう。
| 1年経過時 | 3年経過時(特定技能1号へ) | |
| 技能水準 | 育成就労評価試験(初級) | 育成就労評価試験(専門級)または 特定技能1号技能測定試験 |
| 日本語水準 | JLPT「N5」(またはJFT-Basic「A1」)以上 | 日本語教育の参照枠「A2.2」相当以上 (JLPT「N4」以上/JFT-Basic「A2.2」相当) |
1年経過時の評価試験(初級)に合格することが、2年目以降も継続して育成就労を続けるための必須要件となります。3年間の育成就労プログラムを修了し、即戦力である「特定技能1号」へスムーズにステップアップ・移行するためには、より高度な技能・日本語能力の証明が求められます。
5.育成就労受け入れ企業の要件
育成就労制度を活用して外国人材を受け入れるためには、受け入れ企業(特定有資格事業者等)側にも厳格な要件が課されます。事前に必要な社内体制や手続きを把握し、準備を進めておくことが不可欠です。
5-1.直接雇用・フルタイム契約
受け入れ企業と育成就労生との間では、「直接雇用」かつ「フルタイム労働契約」を結ぶことが義務付けられています。
派遣社員としての雇い入れや、短時間労働(パート・アルバイト)での契約は認められません。労働条件や給与体系についても、日本人の同等労働者と同等以上の報酬を支払うなど、労働基準法をはじめとする関係法令を遵守した雇用契約の締結が必須となります。
5-2.育成就労計画を策定する
受け入れ企業は、外国人材を段階的かつ計画的に育成するための「育成就労計画」を自ら策定し、認可を受ける必要があります。
計画内には、従事させる業務内容(「外食」または「医療・福祉施設給食製造」の区分)をはじめ、実施する講習の内容、年次ごとの技能習得目標、さらには指導員の配置やサポート体制などを具体的に明記しなければなりません。
5-3.適切な監理支援機関の選定
育成就労制度では、「監理支援機関」と連携して受け入れを進めることが一般的です。監理支援機関は、企業の育成就労計画の作成支援や、受け入れ後の適切な運用に対する指導・監査、外国人材への相談対応など、多岐にわたる役割を担います。
外食分野における受け入れでは、制度上の手続きだけでなく、現場のシフト体制や実務(調理・接客・給食製造)に理解のある機関を選ぶことが成功の鍵となります。外国人材に対する日本語学習の継続支援や、生活面のフォロー体制が整っているか、外食業界でのサポート実績が豊富かといった観点から、信頼できる機関を吟味・選定することが重要です。
5-4.協議会への加入
外食分野で育成就労生を受け入れる企業は、農林水産省が組織する「外食業特定技能・育成就労協議会(仮称)」などの構成員になること(協議会への加入)が義務付けられています。
協議会への加入を通じて、制度の適正な運用や最新の運用要領の把握、地域の受け入れ環境の整備に協力することが求められます。原則として、育成就労生を受け入れる前(または計画の認可申請時まで)に加入手続きを完了しておく必要があります。
【協議会とは】
協議会とは、特定産業ごとに分野を担当する省庁が設置している機関のことです。
「特定技能」の協議会と「育成就労の協議会」は統合され、ひとつの協議会として運用される方向で調整が進んでいます。
▶ 協議会について詳しくはこちらの記事で解説しています。
※参考:食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について | 農林水産省
5-5.賃上げ・昇給率の公表
育成就労制度では、受け入れ企業に対して「賃上げ・昇給率の公表」の取り組みが求められます。外国人材の適切な労働環境整備とキャリアアップを支援するためです。
技能の修得段階(評価試験の合格等)に応じた昇給と、その達成状況・方針を明確にすることが企業要件として評価されます。賃上げに対して透明性を高めると、「この会社で長く頑張りたい」という外国人スタッフのやる気アップになり、長く働き続けてもらうことにつながります。
6.育成就労外国人の転籍要件
育成就労制度では、従来の技能実習制度とは異なり、一定の要件を満たすことで本人の意思による「やむを得ない事情以外の転籍(転籍)」が認められています。ただし、無条件にいつでも転籍できるわけではなく、期間や能力に応じた要件が設定されています。
6-1.就労開始から2年経過後に転籍可能
育成就労における本人の意向による転籍は、原則として同一の受け入れ企業において「就労開始から2年(24か月)」を経過していることが基本要件となります。
受入企業側の初期育成コストや計画的な技能習得の観点から、最初の2年間は同一企業での継続勤務が求められます。なお、受け入れ企業側のやむを得ない事情(倒産や解雇、法令違反等)がある場合や、やむを得ない事情による転籍はこの制限の例外となります。
6-2.転籍に必要な日本語・技能
2年経過後に本人の意向で転籍を行う場合、ただ期間を満たすだけでなく、一定の「技能水準」および「日本語能力」を証明・取得していることが条件となります。
| 技能水準 | 育成就労評価試験(初級)への合格 |
| 日本語水準 | 日本語能力試験(JLPT)N5(またはJFT-Basic「A1」)以上の合格、および一定の日本語講習の受講など |
上記の要件をクリアすることで、同一分野内での転籍手続きが可能となります。
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7.受け入れ前のチェックリスト
外食分野で育成就労生を受け入れる際は、制度上の要件だけでなく、現場での育成体制まで事前に整えておくことが重要です。
以下の項目を確認しておきましょう。
| チェック | 確認項目 |
|---|---|
| □ | 自社の業務が、育成就労の外食業分野の対象業務に該当している |
| □ | 育成就労生と直接雇用契約を締結し、適切な労働条件・報酬を設定している |
| □ | 3年間の育成就労計画を作成し、身につけてもらう技能や日本語力の目標を整理している |
| □ | 協議会への加入や監理支援機関との連携など、必要な受け入れ手続きを確認している |
| □ | 入社時の日本語力を確認し、継続して日本語を学べる環境を整えている |
| □ | 写真・イラスト・ふりがななどを活用した、分かりやすい業務マニュアルを準備している |
| □ | 日本語力や技能に応じて、厨房・ホール・レジなど段階的に業務を任せられる体制を整えている |
| □ | 現場の店長やスタッフに、外国人材の指導方法や受け入れ時の注意点を共有している |
| □ | 育成就労終了後の特定技能1号への移行も見据え、本人のキャリアを支援できる体制を整えている |
育成就労では、外国人材を採用するだけでなく、約3年間をかけて技能と日本語力を育成する視点が必要です。
制度上必要な準備に加えて、入社後にどのように仕事を教え、日本語学習を支援するかまで事前に整理しておくことで、現場でのミスマッチや負担を減らしやすくなります。
8.まとめ
育成就労制度を活用した外食分野での外国人採用は、将来の「特定技能」へのステップアップを見据えた長期的な人材戦力に有効です。
一方で、業務区分の遵守や時期ごとの試験要件、育成計画の策定や協議会への加入など、企業側にもしっかりとした準備が求められます。
「具体的な手続きに不安がある」「適切な受け入れ体制を整えたい」とお悩みの際は、ぜひJapan Job School(JJS)にご相談ください。
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