外国人就職支援機関で働く、私が教える外国人雇用のメリット
新しい優秀な人材が欲しい!でも、どうしたらいいのだろう?
この記事をご覧になっているあなた、そう思っていませんか。
日本では少子高齢化が進み、優秀な労働力を確保することが難しくなってきており、新しい採用手法を検討している企業は増えています。その選択肢の一つとして外国人雇用があります。2022年1月28日、厚生労働省より「『外国人雇用状況』の届出状況のまとめ(令和3年10月末時点)」が公表されました。「外国人雇用状況の届出」が義務化されてから、2007年以降で最高を記録しています。
あなたも、このように世の中でも注目されていることは理解しているものの、
- 既存の日本人従業員とうまくやっていけるのか?
- 外国人は既存の採用課題の解決策になるのか?
- 日本社会や文化になじめるのか?
と迷い、採用検討段階で止まっていませんか。
そこで、本記事では、「外国人雇用のメリット」を中心に外国人就職支援機関で日本語講師として働く筆者の目線も加えながら述べていきます。是非、外国人雇用に向けて一歩踏み出すきっかけになることを願っています。
1.企業の外国人雇用のメリット
1.1労働力確保による人材不足の解消
1番のメリットは、労働力が確保できることです。2020年は新型コロナ感染拡大に伴い、新たな外国人雇用は停滞していますが、2022年6月から本格的に入国緩和政策が始まり、外国人労働者の数は増え続けることが予想されます。
実際に日本語学校や外国人受入機関は、母国で待機中の外国人が一斉に日本に入国することを予想し、日本語教師の求人を多数出していることからも裏付けられます。
また、コロナ前から、日本政府が外国人の雇用管理に力を注ぎ、2019年より特定技能ビザ制度を実施するなど雇用確保に尽力し続けています。少し先を見据え、少子高齢化が進む日本人だけでなく、外国人労働者も視野に入れると、労働者の分母が増え、求人に合致した労働力が確保できる可能性が大きくなります。
社内公用語が英語として話題になった「楽天(総従業員数23,841人(2020年12月31日時点)」では、現在70を超える国・地域出身の従業員が活躍しています。また、従業員の国籍比率も日本人78.3%外国人21.7%となっています。いきなり社内公用語を変えることは難しいことですが、工夫次第で労働力確保による人材不足は解消されます。
1.2若くて優秀な人材が集まりやすい
まずは貨幣価値の違いにより、中国、ベトナム、ネパールなどから日本への就職希望者が多く、母数の違いにより日本人よりも外国人が集まりやすく、目的や雇用・昇進条件が明確なほど意欲の高い人が集まります。
次に、日本にいる若い外国人は優秀な人材も多くいます。留学生の場合、学業に差し障りが出ない範囲でアルバイトが出来る「資格外活動」を入国管理局に申請して働き、卒業後に日本で働く人が増えています。2019年度では36.9%となっています(独立行政法人 日本学生支援機構による)。
現在では卒業後の企業側の受け入れ態勢が不十分なため、就職できない留学生が多いですが、体制を整えることができれば、飛躍的に数字を伸ばすことも可能です。
エンジニアに関しては海外から新卒のエンジニアを採用している企業も増えています。製造業の「カシオ計算機株式会社」では、担当業務を明確にする提示採用方法で、高い専門性や気概を持った優秀な学生を確保することに成功しています。(外国人の活用好事例集「厚生労働省」)
上記理由により、若くて優秀な人材が集まりやすくなります。
1.3コミュニケーションが活発になり職場の活性化につながる
外国人のひたむきに働く姿勢や積極的に改善・提案する姿勢は周りの日本人社員にとっていい刺激になります。今までの社内習慣を見直すきっかけになり、職場のコミュニケーションが活発になり、より働きやすい環境づくりにも繋がります。
私の授業でも、当初は講師が一方的に日本の文化やルールについて説明するスタイルでした。ある時、生徒から日本で生活する上で不思議に思うことについて質問がありました。1人の生徒が質問を始めると他の生徒も質問し、気がつくと生徒間で積極的に意見を言い議論を始めていました。私が受けてきた教師説明型の教育方法と彼らの参加型教育の違いに驚きました。
それからは、外国人生徒に発言する機会を多く設け、外国人の母国の文化と日本社会の違いを明確にし、注意すべき点を教えています。外国人が日本の文化に溶けこむことも大切ですが、外国人の文化考えを積極的に取り入れることで、コミュニケーションが活発になり、職場の活性化につながります。
1.4新しいアイデアや手法が生まれやすくなる
日本人とは異なる文化や教育の中で生活してきた外国人労働者の視点や文化に触れることで、いつもとは違うアプローチが可能となり、新しいアイデアや問題に対する解決策が期待できます。
私の授業内容で言えば、日本語だけでなく、外国人の母国語を併記するスタイルに変えました。
表現の難しい日本語は、外国人にとっては全て理解することは困難です。
ある生徒から、「母国語が一緒に書いてあれば簡単に理解できるのに・・・」と独り言が聞こえてきました。詳しく聞いてみると、母国の日本語テキストには、日本語と一緒に母国語も併記されているのです。
そのことをきっかけに、国家資格である介護福祉士の試験問題練習の時は、難しい日本語表現は彼らの母国語も一緒に示すことより簡単に理解することができました。彼らの意見がなければ出てこないアイデアです。
新しいアイデアや手法は、日本の常識にはない、新しい発想から生まれやすくなります。
2.外国人労働者のメリット
2.1高い給与水準
日本で働く外国人は、最低賃金が保障されており、ビザの種類のよっては日本人と同程度の賃金が保障されています。
国別所得比較をすると、日本の平均年収は400万円を超えているため、ベトナムとは約10倍、ネパール・ミャンマーはそれ以上の格差があります。
私の学生も、日本で得た収入で母国に送金したり、母国に帰って事業をする資金にしたりしています。
2.2治安がいい
日本は軽犯罪の取り締まり厳しめであるせいか、世界の治安のいいランキングでも常に上位です。
海外では、夜中に女性が一人で歩く、音楽を聴き携帯をいじりながら道を歩くことはとても危険ですが、日本では日常行われています。
また、日本では、電車内の落し物のほとんどが持ち主に戻る、店頭に商品を陳列していても盗まれないなども海外のニュースサイトでよく取り上げられています。実際、日本の刑法犯認知件数は2002年の約285万件をピークに連続減少を続けています。
2.3スキルアップ
日本企業で特に製造業や建設業の会社で働くことで、手に職がつけられるので人気があります。建設では、ビルの建築の際に「建築板金」「建築大工」「型枠施工」などの職種を経験することにより、開発が進む母国で技術を活かすこともできます。
また介護職も、以前の大家族で高齢者を介護する形態から核家族化へと移行することにより、母国での介護に関するニーズが高まってきています。
3.外国人を採用する際の注意点
3.1労働が認められた在留資格(就労ビザ)が必要
外国人を雇用するのにいくつか守るべき注意点があります。以下のことを守らないと違法行為になり、雇用主が罰せられる可能性があります。
- 外国人が就労可能な在留資格を得ているか
- 仕事内容が在留資格の範囲内か
- 在留資格が過ぎていないか
必ず労働が認められた労働資格(就労ビザ)であることを確認してください。
3.2文化や仕事に関する価値観の違いを理解する
日本の常識が外国人に全て理解できるとは限りません。
日本人は挨拶や時間を守ることが非常に大切だとしていますが、外国人はそこまで意識していないことが多いです。また宗教によっては、アルコールや牛肉を食べることを禁止しており、1日の決まった時間にお祈りをする人もいます。
このような文化や仕事に関する価値観の違いを理解し、会社全体で共有し理解していくことが必要となります。
4.まとめ
今後ますます日本は少子高齢化が進みます。ITの目覚ましい進歩も期待できますが、マンパワーは絶対に必要であり、外国人労働者に頼る比重が大きくなることは間違いないでしょう。
確かに外国人を雇用する際は一定の注意が必要です。しかしながらそれを上回るメリットがあること、日本の国を挙げて外国人の雇用を促進していることを考えれば、当然外国人雇用は選択肢の大きな1つとなってきます。
私の教える学生も日本企業で働くことは不安で一杯だと話しています。そんな時、彼らにはこう話します。
「不安なのは日本企業側も一緒ですよ。お互いの文化や価値観の違いを知り、笑顔でコミュニケーションを取りましょう!」