カンボジアのタブーや国民性の理解を深める|一緒に働く上で絶対に知っておきたい情報満載
日本には約2万人のカンボジア人がいます。
そのうち令和6年6月末時点で約5461人が在留資格「特定技能」で就労しており、国別ランキングでも6位の人数です。
今後、日本で就労するカンボジア人はさらに増えると予想されるため、カンボジアの文化・習慣・マナーを知っておくことは非常に重要になります。
そこでこの記事ではカンボジア人の文化・習慣・タブーを詳しく解説します。カンボジア人と働いている方はもちろん、これからカンボジア人の採用を考えている方もぜひ最後まで読んで、円滑な職場環境作りに役立ててください。
外国人と一緒に働く上では海外への深い理解が大切になってきます。
外国人雇用を考えている方は「日本企業さまのための外国人理解ブック」をご参考ください。
1.カンボジアの基本情報
東はベトナム、北はラオス、西はタイに国境を接しており、南は南シナ海に開かれています。
📍カンボジア基本情報
- 国名:カンボジア王国
- 面積:18万㎢(日本の約半分)
- 気候:熱帯モンスーン気候(高温多湿で年平均気温は約27℃)
- 人口: 1690万人
- 言語:クメール語
- 宗教:上座部仏教
1-1. カンボジアの近現代史
カンボジア人と関わる上では、その苦難の歴史を知っておく必要があります。
カンボジアは1884年からフランス保護領となり、1887年にはフランス領インドシナ連邦に組み入れられました。フランス領インドシナ連邦では、ベトナム人役人がカンボジアを間接統治したため、ベトナムに対する反感が強くなった時代でもあります。
第二次世界大戦以後の1953年に独立を果たしますが、その後もベトナム戦争に巻き込まれたり、「クメール・ルージュ」という共産勢力との勢力争いがあり、情勢は安定しませんでした。
そしてカンボジア最大の犠牲を出したのが、クメール・ルージュ統治下の1975年~1979年、ポルポト政権下で起きた自国民の大虐殺です。約5年間の統治で国民の三分の一、四分の一ともいわれる約170万人を虐殺しました。
特に知識人、医者、教育関係者を虐殺したため、カンボジアのライフラインは徹底的に破壊されることになりました。
ポルポト政権下の影響は現在も残っており、特に医療・教育水準の低さが問題となっています。
出典:外務省「カンボジア王国 基礎データ」
出典:外務省「カンボジア全図」
2.カンボジアの文化と習慣
カンボジアの文化と習慣を、宗教・交通手段・祝祭日に焦点を当てて解説します。
2-1.カンボジアの95%が仏教徒
カンボジアは上座部仏教を国教と定めており、国民の95%以上が仏教徒です。ただし信仰の自由が認められているため、キリスト教やイスラム教を信仰している人もいます。
上座部仏教とは、インドから南方に伝わりスリランカや東南アジアで広く信仰されている仏教です。戒律を厳格に守り、悟りを得ることを目的としています。
同じ仏教でも日本が信仰しているのは大乗仏教です。こちらはインドから北方(中国・朝鮮半島)に伝わりました。
出家した人だけが救われると説く上座部仏教と異なり、大乗仏教は出家せずとも誰でも救われると説いています。日本でも「念仏を唱えるだけで救われる」という仏教の考えを持っている人が多いでしょう。
カンボジア人と仏教について話すときには、日本人が信仰する大乗仏教の考えを押し付けるのではなく、彼らは上座部仏教という厳しい戒律がある信仰を持っていることを念頭に置いておくといいでしょう。
仏教寺院が生活のライフラインを支えている
実は上座部仏教は他力による救済を否定しています。つまり、困ったことがあったら自分で解決しなければなりません。
しかし実際には、仏教施設で病気になった人々の治療が行われているなど、周辺住民の生活を支えています。地元のコミュニティが仏教施設を運営している場合もあります。
仏教施設は宗教実践の場であると同時に、地元住民の生活の中心でもあります。
2-2.交通事情と移動手段
カンボジアには公共交通機関(電車、バスなど)はほぼありません。最近公共バスが見られるようになってきました。
基本的な移動手段はバイクタクシーやトゥクトゥクです。
カンボジアはまだ交通インフラが整備しきれていないため、朝・夕の通勤時間には道にバイクタクシーやトゥクトゥク、車が入り乱れ、身動きが取れない状態になることは珍しくありません。
そのような状況なので、カンボジア人の交通マナーへの意識はかなり低いです。
以下のようなことが、日本人の交通意識と異なります。
- 渋滞のときに逆走する
- 車優先(歩行者に道を譲らない)
- バイクのヘルメット着用率が低い
- 飲酒運転をする(法令で禁止されてはいるが、検問がないため。)
- 路上駐車が当たり前
カンボジア人を雇用するときには、日本の交通ルールを丁寧に伝えなければなりません。カンボジアにいるときと同じ感覚で飲酒運転や、路上駐車をしてしまうことがあります。
2-3.正月とお祭り
カンボジアでは1月から4月にかけて3回お正月があります。
- 1月1日:日本と同様のお正月(チョール・チュナム・クマエ)
- 2月 :中国の旧正月に行われるもの(チョール・チュナム・チェン)
- 4月中旬:カンボジアのクメール正月
カンボジアには華人(中国系移民)が数多く住んでいます。他の東南アジア諸国では都市部にのみ華人がいる場合が多いですが、カンボジアでは農村部にも広く華人が住んでいます。
そのため中国の文化や習慣が浸透しており、旧正月もお祝いする人が多いです。
3つの正月のうち、最も盛大に祝われるのが4月のクメール正月です。祝日が4日間定められ、その間は実家に帰って家族や親戚とお祝いします。(2024年のクメール正月は4月13日~16日でした。)
クメール正月の有名なお祭りは「アンコール・ソンクラン」と呼ばれる水かけ祭りです。正月に仏像や仏塔、年長者を水で清める習慣がありましたが、それが家族や見知らぬ人とも水を掛け合って体を清める祭りに変化しました。
日本で働くカンボジア人の多くは、4月のクメール正月の祝日に合わせて長期休みを申請するでしょう。事前にクメール正月に帰国するか聞いておくと、業務に支障が出にくくなります。
岡山県カンボジアビジネスサポートデスク「カンボジアの交通問題」
3.宗教に関するタブー
カンボジア人の多くは仏教徒ですが、信仰しているのは上座部仏教で、日本人が知っている仏教のルールと異なることがあります。
ここでは以下2つのタブーを紹介します。
- 服装|露出の多い服は避ける
- 頭を撫でてはいけない
カンボジア人と一緒に働くときに参考にしてください。
3-1.服装|露出の多い服は避ける
上座部仏教では寺院にお参りするときに限らず、露出の多い服装は控えるべきだとされています。
女性は肩やお腹が出る服装、ひざ上のショートパンツやスカートの着用は避けるべきだとされています。ノースリーブも同様です。
また、男性もノースリーブや短パンを着ることは少ないです。
夏の暑い時期に長袖長ズボンでいるカンボジア人は珍しくありません。
宗教的な理由で半袖や半ズボンを着るのを好ましくないと考えている場合もあるので、服装については触れないといいでしょう。
3-2.頭を撫でてはいけない
上座部仏教では「頭には精霊が宿る」と信じている人がいます。
頭を撫でることで、その精霊がいなくなってしまうため、カンボジア人の頭を撫でることは絶対に避けなければなりません。
同僚のカンボジア人の子供と会ったときに、つい日本人の子供と同じように頭を撫でてしまいトラブルになったという事例もあります。
カンボジア人に限らず、タイ人やベトナム人など他の上座部仏教を信仰する国でも同様に、頭を撫でることはタブーです。
4.日常生活に関するタブー
宗教以外にも、カンボジア独自の習慣でタブーとなっていることがあります。
日本人にとっては馴染みがないこともあるので、注意が必要です。
- 公共の場で政治的な話題をしてはいけない
- 目上の人を敬う挨拶を心掛ける
- 政府関係の施設や屋台街での撮影は注意が必要
それぞれ詳しく説明します。
4-1.公共の場で政治的な話題をしてはいけない
ポルポト政権下の大虐殺を筆頭に、カンボジアの内戦期は国民にとって辛く、苦しい時代でした。内戦が終わったのも1998年で、まだ30年も経っていません。
特に国内の勢力が複雑に絡み合っていたため、今は表面上良好な関係でも、カンボジア人同士で複雑な感情を持っている場合もあります。また、内戦期には隣国のタイ・ベトナムも関与しており、タイ人やベトナム人にマイナス感情を抱くカンボジア人もいます。
カンボジア人は同僚同士だからといって、政治や内戦に関わるような話はしません。日本人の同僚から話を振ることも避けるべきです。
4-2.目上の人を敬う挨拶を心掛ける
カンボジア人の挨拶は自分と相手の関係によって仕方が少し変わります。厳格な上下関係が挨拶にも表れているためです。
📍カンボジア人の挨拶は合掌(体の前で両手を合わせる)ですが、相手との関係によって手の高さが変わります。
- 相手が同僚・友達・部下 → 胸の前
- 相手が上司・年上の人 → 口の前
- 相手が親・先生・祖父母 → 鼻の前
- 僧侶・王様 → 額または頭の上
仕事で初めて会った人とは口くらいで手を合わせるのが一般的です。握手を求められたときも、合掌をしてから握手をします。
4-3.政府関係の施設や屋台街での撮影は注意が必要
出張でカンボジアに行ったときに、スマホで様々な場所の景色を写真に撮るかと思います。
しかし、写真を撮影しただけで警察に連行されてしまう場所もあるので注意が必要です。
📍写真撮影が禁止されている場所
- 軍・治安機関施設とその周辺
- 空港周辺の「撮影禁止」の表示がある区域
- 国境付近(隣国にカメラを向けることも避けたほうがいいです)
- 仏教寺院(一部の聖域)
📍写真撮影は禁止されていないが、注意が必要な場所
- 屋台の食べ物や雑貨(買わないのに写真撮影だけするのはマナー違反だとされています)
- 公共交通機関(バス車内など)
屋台やバス車内では、「写真を撮ってもいいですか。」と一言聞いてからであれば、撮影できる場合もあります。
東洋経済オンライン「カンボジア人に学ぶ、「恩返し」の作法」
外務省「海外安全ホームページ カンボジア」
5.カンボジアの国民性
カンボジア人の考え方や行動には、仏教の教えが関わっていることがあります。
5-1.優しくおおらかな人が多い
カンボジアの人は、常に笑顔を絶やさず、誰にでも優しく接する人が多いです。
これは仕事でも同様で、何かミスをしたときでも厳しく叱ることはせずに、穏やかに次にミスをしない方法を考えます。
また、自己主張することはあまり得意ではありません。我慢強い国民性もあり、自分の本音を話したり、意見を伝えることはどちらかというと苦手な人が多いです。
日本人から見たら「主体性がない」、「言われたことしかやらない」と見られる可能性のある国民性です。カンボジア人と働くときには、カンボジア人の国民性を理解しつつ、日本での働き方を伝えられたらいいかと思います。
外国人との円滑なコミュニケーションは定着率向上につながります。
外国人とより良い関係を築きたい方は「コミュニケーションマニュアル」をご参考ください。
5-2.目上の人を敬う気持ちを持っている
カンボジアは日本以上に上下関係が厳しいです。特に目上の人、年長者へ尊敬の気持ちを出すことを徹底しています。例えば、自分と相手の関係によって挨拶の仕方を変えています。
カンボジア人は服装や学歴から上下関係を把握することが多く、特に家柄や学歴が高い人はプライドが高いです。
カンボジア人従業員を人前で注意すると、その従業員はやめてしまうかもしれません。
何かを注意したいときは、他の人に見られない場所で丁寧に伝えるといいでしょう。
6.まとめ
仏教徒が多いカンボジア人は、仏教を信じている人が多い日本人と相性がいい場合が多いです。優しく、おおらかな人柄であるため、同僚とも良好な関係を築けます。
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